ご存じの通り、地球研の設立の趣旨には、研究活動と並んで「研究成果を広く社会に伝える」ことが掲げられています。また、国立大学・研究機関の法人化以降、他機関でもこのことに取り組まなければならなくなりました。しかし、そもそもなんのためにこのような活動をしなければならないのか、これを研究者はどう考えて実際なにをすればよいのか、なにができるのか、それによってなにが変わるのか、といった基本的な議論は、これまで地球研所内でほとんどされてきませんでした。この問題は、地球研の任期の間だけ考えればよい、というものではなく、研究者をやっている限り一生ついてまわる問題であり、地球研という研究機関が存続する限り、研究機関としても考えていかなければならない問題です。ゆえに、今後、わたしたちが地に足をつけてこのような活動をしていくためには、場当たり的な対応ではなく、じっくりと、理論的根拠をもって取り組むべきであると考えます。たとえば、この問題を、「広報」や「宣伝」とはちがった観点から考えてみる必要があるでしょう。これを「学問と社会のあり方」という切り口で、広く議論をする場として、この研究会を開催したいと思います。
第1回は、この分野で先駆的な研究を行なっている方々を講師にお招きして、まずは「研究成果の発信」をめぐって、今、日本で、世界で、どんな考え方で、どんな取り組みがなされているかの現状を紹介し、討論をしたいと思います。講師陣は若手中心の個性派ぞろいです。どうぞご期待ください。