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第19回地球研市民セミナーが開催されました。

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 2007年5月25日、第19回地球研市民セミナーが開催されました。
 「途上国農村のレジリアンス(=あるショックに対する回復力、復元力のこと)を考える」をテーマに、サブ・サハラアフリカや南アジアの半乾燥熱帯での途上国農村の回復力、旱魃(かんばつ)などの環境変動に対する対応などについて梅津千恵子地球研・准教授が講演を行いました。以下はその要旨です。

「途上国農村のレジリアンスを考える」

梅津千恵子(総合地球環境学研究所・准教授)

 地球環境問題を考えるためには、弱者の視点から問題を見なければならない。いわゆる半乾燥熱帯と呼ばれる地域では地球全体の6分の1の人口が住み、そのうちの半数が1日1ドル以下で生活する絶対貧困層である。この地域の人々の生活は雨に頼った天水農業に依存するなど自然資源に依存しているため、環境変動に対して脆弱であり、植生や土壌なども同時に人間活動に対して非常に脆弱である。(半乾燥熱帯の年降水量は500-700mmで変動が大きい。ちなみに京都の平均年降水量は1545mm)
 レジリアンスとはあるショックに対する回復力、復元力のことである。ショックは旱魃などの気候変動である場合もあるし、内乱や制度的変動など社会的・政治的である場合もある。生態学の分野では60年代頃から生態系の動態を研究するためにレジリアンスの概念が使われているが、近年、社会科学の分野にもこの概念を導入しようとする人達が現れている。途上国で起こっている土壌劣化、森林破壊は人間社会のレジリアンスにどう影響を与えているのか?農村世帯やコミュニティのレジリアンスを形づくる要因は何なのか?国家の政策や制度はどのように影響を与えているのか?
 ザンビアの2004年秋から2005年春までの農業シーズンは92年以来の大旱魃となり特に東部と南部を中心に主食のトウモロコシが大打撃を受けた。
  2005年年11月に訪問した東部州の農家ではすでに農家の貯蔵用の納屋も空っぽでトウモロコシのストックが全くないという危機的状況であった。近年ザンビア各地で起こっている急速な森林の伐採は非常時の食糧となる野生のキャッサバや山芋のような救荒食物へのアクセスを著しく減少させる事態となっている。
 2005年12月に起った津波は南部タミルナドゥ州の海岸部の農村へ甚大な人的・物的・環境被害を及ぼした。沿岸地域で被害が多かった3郡では約6500ヘクタールの農地が被害を受けた。農作物への被害のみならず、家屋、農地、養殖池、地下水なども被害を受けた。世帯や地域がこのようなショックを受けた時に彼らが持つ潜在的レジリアンスの力が試されるのではないだろうか。
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