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第18回地球研市民セミナーが開催されました。

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   2007年4月20日、第18回地球研市民セミナーが開催されました。
  陸域での水循環について研究する窪田順平准教授が「シルクロード:人と自然のせめぎ合い」をテーマに講演しました。以下はその要旨です。

シルクロード:人と自然のせめぎ合い

窪田 順平(地球研・准教授)

 ユーラシア大陸中央部には、東はモンゴルの草原地域からタクラマカン沙漠を経て、中央アジア、アラビア半島へと続く広大な乾燥・半乾燥地域が広がっており、かつては遊牧民の世界であった。天山山脈やパミール高原といった氷河を抱く山々からの雪解け水は、この地域では例外的に水資源に恵まれたオアシスを作り出している。中央ユーラシアは、オアシス都市を結ぶ「 シルクロード」に象徴される東西の交流の接点であるとともに、農耕と遊牧との接合する場所として、独自の優れた文化を発展させてきた。同時に乾燥地という水が厳しくその生活を規制するこの地域の歴史は、気候変動などによる水資源の変動に対する人間の適応の歴史でもあった。地球研のプロジェクト「水資源変動負荷に対するオアシス地域の適応力評価とその歴史的変遷(略称:オアシスプロジェクト)」では、様々な歴史文書や湖の堆積物、樹木の年輪、氷河のアイスコアなどから復元されたオアシス地域の環境の変遷と人間の対応を、水資源変動の視点から明らかにしてきた。
 近年の地球環境問題を考えるとき、国境だけでなく、民族、宗教、農耕あるいは牧業といった生業など、人間の作り出す境界がその解決を困難とする要因となっている場合も多い。そこで研究プロジェクト「民族/ 国家の交錯と生業変化を軸とした環境史の解明−中央ユーラシア半乾燥域の変遷(略称:イリプロジェクト)」では、環境問題の背景に存在する人間の作り出した様々な境界の問題を取り上げる。対象とする中国西北部からカザフスタン、ウズベキスタンへと連なる半乾燥地域は、農耕、遊牧のいずれにも利用可能な土地が広がり、かつては「草原の道」が通り、遊牧国家が覇権を争った。18世紀後半にロシア、清の2大勢力によって国境線が引かれ、遊牧民の定住化と農耕への転換という生業の大きな変化が起きる。近年では大規模な開発が行われ、その結果として現代的な環境問題が顕在化しつつある。本プロジェクトでは、人間と環境の相互作用の歴史的変遷を「境界」の問題に着目して考察し、「未来可能性のある社会」への新たな視点を獲得すること目指している。

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