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第15回地球研市民セミナーが開催されました。

 2006年10月20日、第15回地球研市民セミナーが開催されました。
地球研の研究プロジェクト「都市の地下環境に残る人間活動の影響」のリーダーを務める谷口真人助教授が、 地下環境に与える人間活動の影響について、アジアの都市での研究から講演を行いました。
以下はその要旨です。

「大地の下の"地球環境問題"」

谷口真人

 我々がよく耳にする"地球環境問題"は、地球温暖化や海洋汚染、生物多様性の減少など、人の眼に見える“地表より上の問題”のみを主に対象としてきました。しかし、我々が住んでいる大地の下には、そのような問題はないのでしょうか?“大地の下の地球環境問題”は、地下の利用が拡大した現在及び将来の人間社会にとって重要であるにもかかわらず、目に見えない現象であるために、これまで長い間放置・無視され続けてきました。
 人口増加に伴う地下水利用の増大により、地球規模で地下水資源が減少しています。また目に見えない地下水汚染が世界各地で進行しています。このような地下水資源の減少、地下水汚染、そして地下水の過剰揚水による地盤沈下や地下熱汚染などの地下の環境問題は、人間活動の拡大によって普遍的な現象として世界の各地で発生しています。さらに人間活動の広範囲化に伴う地下環境の利用は、これまでに経験のない深度に及び始め、様々な問題が顕在化しています。例えば日本の沿岸大都市では、地盤沈下を防止するための揚水規制により地下水位が上昇し、地下構造物(地下鉄駅など)が浮き上がるという新たな問題が生じています。この問題は、「一度人間が自然に手を加えた場合、まったくの自然状態に戻すことは不可能であり、常に人間が手を加え続けて共生する必要がある」という、他の環境問題にも共通する問題点を示しています。未来可能性を損なわない地下環境の利用において、地下水循環を良く理解したうえで、モンスーンアジアの豊富な水社会をポジティブに捉え、地下水利用を推進する時期に来ていると考えています。
 地球研プロジェクト「都市の地下環境に残る人間活動の影響」では、アジアの諸都市で普遍的に発生している“地下環境問題”を、都市の発達段階との関係から明らかにしていきます。これは各都市の発達の程度(人口の増加、道路・鉄道・建物などインフラの拡大など)に応じて、上記の“大地の下の地球環境問題”がアジアの各都市で時間遅れを伴って次々と発生しているからです。そこで、アジア沿岸都市の都市発達過程の駆動力と典型的な段階、地下環境問題と経済成長との関係などを明らかにすることができれば、未来可能性を損なうことなく、地下環境の有効な利用についてのシナリオを提言することができると考えています。地球研プロジェクトでは、未来可能性を食いつぷし、帳尻あわせとして疎んじられ、有効に利用されていない地下環境の現状を、人間と自然との相互作用"環"を解きほぐすことによって明らかにしていきます。

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