以下はその講演要旨です。
「琵琶湖流域」は、日本最大の湖である琵琶湖を含み、滋賀県とほぼ重なる領域である。
琵琶湖は、滋賀にとって、観光、漁業、農業や工業の水を提供する場であるのはもちろんだが、流出河川である宇治川を通して、琵琶湖流域を含む淀川水系全体にとっても、重要な水源となっている。
京都にとっても、明治の東京遷都を機に、琵琶湖と京都市が、琵琶湖疎水で直接つながることで、当時の京都の近代化が促進されたという歴史があり、現在も京都では飲み水の大部分は、疎水からくる琵琶湖の水である。
しかし、1960年代以降、社会の変化によって琵琶湖の生態系が大きく変化し、漁獲の激減、富栄養化をはじめ、人が琵琶湖から享受するさまざまなサービス、さらに、人と琵琶湖との関係も、大きく変わってきている。
市民セミナーでは、このような背景の紹介のあと、本プロジェクトがおこなっている、琵琶湖流域の大小さまざまな河川に流れ込む農業排水と、地域の水環境や琵琶湖との関係の研究についてご紹介する。
プロジェクトでは、生態学、社会学、地質学、地球化学などからなる研究者チームが、分野の連携によって、琵琶湖流域の水環境の、いわば「健康状態」を診断する方法を開発している。
それと同時に、診断結果に基づいて、地域の水環境を、そこに住む人、みずからが適応的に管理する方法、琵琶湖流域の住民、行政をはじめとする多様な関係者が、それぞれの役割を互いに相補って、流域全体の水環境の管理にたずさわっていくための方法を探求している。