第11回地球研地域連携セミナー
東アジアの「環境」安全保障:風上・風下論を超えて
開催報告
東アジアで越境する環境問題は、単なる風上・風下論だけで語ることはできません。この地域の安全保障のためには、相互理解と人的交流が重要となります。今回の地域連携セミナーは、東アジア諸国と日本を結ぶ玄関口である福岡にて、地球研と九州大学東アジア環境研究機構が主催となり開催いたしました。
大槻恭一九州大学教授から始めた趣旨説明の後、柳哲雄九州大学教授より、光化学スモッグやエチゼンクラゲの発生について、動画を交えた講演がありました。つづいて中野孝教地球研教授の講演では、黄砂は問題視されているが、リスクのみならず恩恵もあるとの説明がありました。矢部光保九州大学教授からは、日本で行われていた伝統的なし尿のリサイクルをヒントに、循環社会の実現について講演がありました。そして、窪田順平地球研教授から、環境問題とは、政治・経済・社会・文化と深く関連した問題であり、「人と自然」のつながりの再構築が問題解決を図るために必要であるとの講演がありました。
ワークショップ報告では、5月19日~20日に開催した、九州大学で学ぶアジアからの留学生と日本人学生によるディスカッション・ワークショップの結果報告を、日本・中国・韓国・ASEANの学生がそれぞれ行いました。今後さらに関係が緊密となる東アジア諸国では人的ネットワークが必要であると、ウヤル・アイスン地球研助教から報告がありました。次世代を担う学生の多角的な意見をふまえたパネルディスカッションでは、島岡隆行九州大学教授と、阿部健一地球研教授がコーディネーターとなり、会場から寄せられた質問をもとに5名のパネリストとともに議論しました。
会場には約150名の参加者が集まり、環境問題をボーダーレスで研究することは意義深いなど、熱心な声が寄せられました。 (皇甫さやか)