第9回地球研地域連携セミナー
ユーラシアへのまなざし――ソ連崩壊20年後の環境問題
開催報告


ユーラシア東北部は日本と地理的に隣接する地域ですが、そこにどのような自然環境や文化や生活があるかについては、じつはよく知られていません。今回の地域連携セミナーは、ユーラシアの自然、社会・生活の変化、そこで発生している環境問題と人びとの対応などをテーマに開催されました。

基調講演として、岩下明裕北海道大学教授から、ユーラシアのさまざまな「国境の現場」とそれらをとりまく諸問題について、杉本敦子北海道大学大学院教授から、シベリア永久凍土の自然環境が、地球温暖化によってどのように変化しているかについてそれぞれ報告がありました。

続く二つの講演では、ソ連時代から現在までの人びとの生活実態に焦点が当てられました。地球研の渡邊三津子プロジェクト研究員は、カザフスタンにおけるソ連時代の農業開発が、生業や自然とのかかわり方、現在の生活にどのような影響を与えているかについて、藤原潤子地球研プロジェクト上級研究員は、地球温暖化によるシベリア永久凍土融解が頻繁な洪水をもたらしていること、洪水などの災害や社会変化に対する人びとの適応についてそれぞれ報告しました。三つめとして、白岩孝行北海道大学准教授からは、大きな視点からの報告がなされました。複数の国や地域にまたがる環境問題の解決をはかるためには、科学にもとづいたネットワーク構築が必要であるとし、その試みであるアムール・オホーツクコンソーシアムが紹介されました。

最後のパネルディスカッションでは、石川守北海道大学大学院准教授と阿部健一地球研教授が司会を務め、約140名の熱心な参加者から寄せられた質問をもとに、ユーラシアにおける環境と人間社会にかかわる諸問題について、さまざまな角度から議論が行なわれました。(渡邊三津子)

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写真左から、本堂武夫 北海道大学理事・副学長、 岩下明裕 北海道大学教授、杉本敦子 北海道大学大学院教授、


写真左から、渡邊三津子 地球研プロジェクト研究員、藤原潤子 地球研プロジェクト上級研究員、白岩孝行 北海道大学准教授、


写真左から、石川守 北海道大学大学院准教授、阿部健一 地球研教授、パネルディスカッションの様子


立本成文 地球研所長 閉会挨拶