表紙は語る
肥料作り
小林 舞(プロジェクト研究員)

ブータンは国民の7割が農村に暮らし、なんらかのかたちで農業に携わっている。ヒマラヤ山脈のふもとにあるため、生態系の多様性が高い国で、地域差はあるものの、伝統的には周辺の森林の落ち葉で堆肥をつくっている。この写真は、ガサ県シャリ村で、各家庭が代々管理している「ソクシン」と呼ばれる森から落ち葉を運ぶようすだ。落ち葉は、乾季である11月から3月のあいだに集められる。「ソクシン」は村の住民で管理する共有林である地域も多く、村で落ち葉集めの日を決めて一斉に集めに行く。シャリ村の落ち葉集めはたいてい女性の仕事で、木の枝でかき集めた背丈ほどある落ち葉の山を背負って持ち帰る。それを1日3回くらいくり返し、家畜小屋の近くに置いて少しずつ家畜小屋に敷き、糞尿と混じり合って発酵してから畑に鋤き込む。
写真を撮ったのは、調査でお世話になっているブータン王立大学自然資源大学(College of Natural Resources, Royal University of
Bhutan)の学生ソナム・フンツォ君。ソナム君の同意を得て地球研のコンテストに応募したところ、大賞に選ばれた。写っている女性はキンレーさんという方で、ソナム君から口頭で説明し掲載許可をお願いしてもらったら、とても喜んでくれた。
ちなみに、ソナム君が受け取ったコンテストの賞金は、全額彼女の家族に寄付されたという。
撮影:2017年3月
撮影者:ソナム・フンツォ(Sonam Phuntsho)
撮影場所:ブータン王国 ガサ県 ゴンシャリ区 シャリ村
●表紙の写真は、「2017年 地球研写真コンテスト」の大賞受賞作品です。