特集2

ゲームと環境問題〈その2〉

ゲームカフェ地球研にようこそ
食をめぐる環境問題を遊びながら学ぶ

出席● 王 智弘(プロジェクト研究員) + 太田和彦(プロジェクト研究員) + 熊澤輝一(准教授) + 三木弘史(外来研究員) + 三村 豊(センター研究推進員) + 遠山真理(特任准教授) + 寺本 瞬(プロジェクト研究推進員)

編集●王 智弘 + 三村 豊

環境問題の原因や解決の糸口をわかりやすく伝えるにはどうすればよいか。多くの子どもたちでにぎわう毎年夏休み恒例の地球研オープンハウスにむけて、環境問題を遊びながら学べるゲームづくりに挑戦する研究プロジェクトが増えている。年齢を問わず、未知の世界を疑似体験できるのがゲームの大きな魅力。これまでに完成した5種類のゲーム、「地球研カレーをつくろう」、「Fish & Chips」、「フードポリシー・カウンシル・シミュレーター」、「Let’s Kyoto」、「ネクサス・ゲーム」は、どれも「食」がテーマ。食をめぐる環境問題をゲームでどう表現できるのか。その制作をとおして研究者として感じたことを共有しようと、かかわったスタッフが集まった

三村●みなさんが地球研オープンハウスの企画としてゲームをつくろうと考えたさいに、どのような環境問題を、どういうレベルで伝えることをめざしたのですか。

熊澤●「地球研カレーをつくろう」(略称・地球研カレー)は、環境問題とはなにかもわからないような幼い子どもたちに、フード・マイレージとカーボン・オフセットを理解してもらうことをめざしました。

太田●自分の足で食材を求めて歩き回ることで、生産地と消費地との距離の問題を理解する体験型のゲームですね。

三村●疑似体験とはいえ、自分の体で理解できることは大きな魅力ですね。

太田●生産や流通などの要素を遊び感覚と重ねあわせながら広い空間でストーリーを展開できれば、もっとダイナミックに発展させる可能性もあります。

熊澤●食材を運んでいる最中に、海賊に扮したスタッフが邪魔をするとか。(笑)

三村●オープンハウスで実施するなら、館内放送でハプニングも演出できますね。

太田●地震や台風、異常気象などの出来事をきっかけに、それまで無関係だったほかのプレーヤーと協力する必要が生じたりするとおもしろくなりそう。

熊澤●「地球研カレー」はフード・マイレージを体験すると同時に、カーボン・オフセットを理解するゲーム。カーボン・オフセットの体験的理解としては、食材集め、つまり食材の輸送によって生じた環境負荷に応じて、完成したカレーの台紙に木のシールを貼り付けるだけではもの足りなかった。もっと印象づけるアイディアを出せればよいのですが。

遠山●じっさいに木を植えに行かせるというのは……。(笑)

太田●ペナルティであることをもっと感じさせないといけませんね。

三村●教育には、歴史の年号や数学の公式などの暗記がつきものですが、自分で考えることがだいじです。フード・マイレージにともなう二酸化炭素の排出などの環境負荷に、自分はどうふるまうべきか。それをゲームでどう体験し、理解してもらうかのくふうが見せどころです。

熊澤●「カーボン・オフセットのために木のシールを貼りましょう」だけでは、子どもたちはただ、「シールがたくさん貼れる、うれしいな」で終わってしまう。「泣いている地球をもとに戻すためなんだよ」と説明すれば理解が変わる。それがゲームにおける研究者の役割でしょうね。

「ごっこ」をとおして視点を変えさせる

三村●太田さんが所属する研究プロジェクトには、二種類のゲームがありますね。一つは、食の管理がテーマの「FPC(フードポリシー・カウンシル)シミュレーター」(略称・FPC)。プレーヤーがさまざまな職業を選んで、その立場からアイディアを考えるところがおもしろい。環境教材というよりも、ワークショップ形式で参加者のコミュニケーションを促すことに主眼をおいたゲームですね。

王●もう一つの「Let’s Kyoto」では太田さんが、「プレーヤーがなにかに納得して帰った」と感想を漏らしていたことが印象に残りました。

太田●なにをどれくらい生産するのかの主導権は生産者ではなく、じつは消費者が握っていることをプレーヤーが簡潔に実感したことで「納得」したのだと思います。ふだんの私たちは「消費者」役ですが、「生産者」役や「小売り」役の人がとなりにいれば、消費者の役割に気づきます。

王●日ごろの自分たちが無意識にとっている行動がもたらす「なにか」を、あらためて意識することになりますね。

太田●そうです、それが狙いです。生産者や小売業者の立場になることで、消費が生産におよぼす影響の大きさを知ることになる。ゲームでは、「これまでかかわったことのない職業を体験してみたい」という思いからか、子どもたちに最初に選ばれるのは「消費者」役ではなく、「生産者」役や「小売り」役です。このことも、気づきに一役買っています。

王●これがゲームの魅力ですね。プレーヤーの役割が1種類ではなくて、「Let’s Kyoto」では消費者と小売りと生産者、「FPC」ではそれ以上に多くの職業や立場になれることもポイントでしょうね。

太田●多様な立場から環境問題を体感することになるのが、このゲームの強みかもしれません。

アイディアを引き出すのは「余裕」

太田●同じ参加者に「FPC」を二回、予算の条件を変えて遊んでもらったことがあります。そのとき、最初の回はあらかじめ予算を設定したことから、参加者は「どうやってフードポリシーを実現するか」よりも、「お金をどう配分するか」におもしろさを感じてしまった。

三村●すると、どうなりましたか。

太田●議論すれば問題点が見つかりそうなアイディアでも、「では、人件費、諸経費、会場費はそれぞれこれくらいで……」と、予算配分が議論の中心になってしまった。それが目的のゲームではないから……。

三村●よりよいアイディアを考えることよりも、アイディアを実現することに流れてしまうのですね。現実の環境問題への取り組みでも、同じような傾向がありますね。

太田●現実のフードポリシー・カウンシルでは、その地域にもっともふさわしいフードポリシーとはどのようなものか、だれにも答えのわからない状態から始まります。参画する研究者、生産者、消費者、流通業者のだれもが正解を知らない。そこからたとえば、「30年後のこの地域のみなさんが食べたいものはなんだろうか」と問いをたてる。その「30年後に食べたいもの」を実現するために、「こんなこと」、「あんなこと」をしたいとアイディアを出しあう。そんな展開をゲームで再現したかった。

三村●地域の望ましい未来について、関係者が集まって合意形成する作業ですね。

太田●まさにそうです。現状を前提とする「部分最適」で満足するのではなく、将来を見据えた「全体最適」を考える方向に議論をもってゆきたいのです。

三木●それは「部分最適」を重視しているということでもないと思う。時間が経過したときに価値がどれだけ減っているか、未来においても現在と同じだけの価値をもつかどうか、それがわからないことが問題ではないでしょうか。

太田●易きに流れるということですか。

三木●易きにというか、わかりやすい方向に流れる。将来の価値がわからないので、いまいちばん価値のあることをやろうとすると、お金の話になりやすいのだと思う。

太田●二回目は予算を無制限にしたことで、よいアイディアがたくさんでました。金銭的な余裕があることは、望ましい未来を考えるうえで重要な要素かもしれません。

三木●そういうことだと、私も思います。

太田●予算のように、すこしでも気になる制約条件があると、その条件を満たすことに意識が向くのかもしれないですね。

三木●いまわかっているたしかな価値を、とにかく最大限に上げてしまおうとする。その発想をしばっている価値を一度はずせば、すこし先まで考えられるようになるのではないでしょうか。

現実の要素を落とすか、拾うか

熊澤●「ネクサス・ゲーム」(略称・ネクサス)は、たくさんの変動要因をゲームにみごとに盛り込んでいますね。しかし、意図して盛り込まなかったものがあるのか、盛り込むことをあきらめたものもあるのか、そのあたりはどうでしょうか。

王●落とした要素は大きく二つあります。一つは船の種類。最初は船団をイメージして魚群を探す探査船と漁獲する網船の2種類を考えていました。もう一つは魚の種類で、当初は10種類。しかし、対象年齢や時間の制約を考えると複雑すぎるだろうと、漁船は1種類、魚は5種類にしました。

熊澤●選択肢は減らしたが、必要な要素はきちんと盛り込んでいるのですね。

 じつは、「地球研カレー」は、おいしさというだいじな要素を落としてしまった。安いカレーではなく、おいしいカレーをつくりたいからこそ頑張れるはずです。フード・マイレージやカーボン・オフセットは理解できるゲームにはなったが、現実的かどうかはすこし考え直す必要があります。

王●現実とのちがいでは、現実の漁業者は「ネクサス」のように1回の出漁で5種類もの魚を対象にすることはない。ゲームは世界を単純化する必要がありますから、現実の忠実なモデル化はむずかしい。

太田●プレーヤーがゲームのなかで集中できるポイントは、せいぜい一つか二つくらいではないでしょうか。ニンジンや牛肉を手に入れるためにフィールドを歩き回ることでフード・マイレージが多くなるというのが「地球研カレー」の一つのポイント。私がそこにプラスしてほしい要素は、野菜のつくり方と二酸化炭素の関係です。同じ生産地でも、ハウス栽培の野菜は重くて運ぶことがたいへんだとかね。

王●「旬」の材料をつかった料理はおいしいというように、旬の要素を評価に入れるとおもしろいかもしれない。ハウス栽培はいつでもおいしいのかもしれませんが。

三村●「Fish & Chips」はゲームとして必要十分なデザインになっていると感じますが、なにか要素を落としたのですか。

三木●要素を落とすのではなく、ゲームとして成り立つ最低限の要素だけを集めてつくりました。生きものの数にはルールがある。自由主義経済は市場原理で決まる。こういう要素だけでもゲームになるのでは、と取り組んでみました。

太田●現実の要素をそぎ落としてゲームにするのではなく、最低限の要素だけから組み上げたゲームということですか。

三木●まずは必須の要素を拾って、それでつまらなかったら別の要素を足す。おもしろくなったら完成です。

王●このゲームをつうじて、なにを学んでもらおうと考えたのですか。

三木●行動をしばる自然や社会の条件を同時に満たすことのむずかしさ。それに、初期設定はかんたんでも、多くの人の相互作用の結果、複雑な状況が発生するということ。この二つを伝えたかった。いかにも物理を研究する人間の世界観です。(笑)

王●いったん要素を詰めこんでから、余計なものを削り落とすのに四苦八苦した私には、三木さんの手法はとてもエレガント。

三木●最後は、ゲームがきちんと展開するかをテストして、ゲームとしておもしろくなるように点数配分を決める。それだけで、ぼくはゲームをつくりました。

環境問題のゲームは複雑でもよい

三木●ほかのゲームは複雑な要素がいくつも入っていますね。ぼくは「Fish & Chips」くらい簡潔でないと、プレーヤーにルールをわかってもらえないと思っていた。けれども、複雑なゲームでもきちんと説明すれば受け入れられるものなのですね。

遠山●環境問題をテーマにすると、ゲームを複雑にする印象がありますね。とはいえ、ゲームとして楽しめることだけが目的ではない。研究者が意図したゲームのコンセプトを遊びながら無意識のうちに理解してもらうのが理想。

王●進行役の研究者がいなくても、充分に楽しめるゲームをつくろうという狙いはありました。もちろん、ゲームから学べるメッセージを印象づける研究者とくふうを加えれば、学習効果はより高くなるでしょうね。

太田●ゲーム中のプレーヤーどうしの会話もおもしろい。「FPC」だと、研究者が務めるゲーム・マスターが最初に状況を設定したら、あとはプレーヤーから話題が次つぎに飛び出します。「行政は意外とこういうことができます」、「流通はこういうこともできます」というような情報まで提供されます。

遠山●研究者と一般の方がたの対話のツールにもなりますね。

太田●緊張感を解くアイスブレイクにもなるし、意識を集中させる場づくりにもなる。

熊澤●一方的に教える姿勢ではなく、その場でともに楽しむ姿勢がだいじですね。

太田●プレーヤーに、「視点や立場をちょっと自由に変えてみませんか」と提案できるのも、中立な立ち位置にいる研究者だからこそできるのかもしれません。

熊澤●ゲームのしくみや展開がよくわからなくなったときに、「自分たちがやっているのは、こういうことだったんだ」と気づくきっかけを提供することも必要です。

太田●ゲームで困った状況になったとき、たとえば「これが豊作貧乏という現象です」と状況を言語化したり、食材を求めて歩きまわったプレーヤーが「疲れた」と漏らしたときに、「ふだんの買いものでは気づかないけど、どこかでだれかが疲れているのですよ」とメッセージを伝えたり……。

三村●ゲームの状況に応じて環境問題とのつながりを解説する機会を設けられるのは、複雑なゲームだからこそのよさではないでしょうか。単純なゲームだと、一つのメッセージしか伝えられない。

遠山●私はiPS細胞をテーマにした「幹細胞かるた」をつくったことがあります。専門知識の学習・理解が目的ではなく、子どもたちがいつか生物学を習うときに、「そういえばかるたであんなことばが出てきたな」と思い出してもらうためのゲームです。環境問題のゲームは、覚えるとか親しむことよりも、考えるプロセスを重視している。

ゲームをとおして研究者が提供できるもの

三木●「環境問題のゲームに共通する要素はなんだろうか」と考えているのですが、まだ答えは出ていない。おそらくトレード・オフ(両立しない経済関係)はその一つ。

熊澤●システム全体の存続、もしくは集団としての進化というのはどうでしょう。

三木●社会的ジレンマの克服ですね。部分最適が全体最適に直接つながらない。

太田●具体的にはどういうことですか。

熊澤●「Fish & Chips」が取り入れている要素です。漁場全体を持続させつつ、全員で高収益をめざす。それが環境問題のゲームの特徴でしょうか。いっぽうで「地球研カレー」は、プレーヤー同士が競争するのではなく、個人で評価基準の達成をめざしているから、根本的にちがう。

三村●しかしね、地球環境を考える以上は、他人もかかわっているわけですよ。

三木●個人レベルであるていど満足があってこそ、全体レベルでの満足が達成できるという前提がある。そうはいっても、全体のために自分はなにかを諦めないといけないというとき、それを個人として受け入れられるかどうかです。

三村●決断が必要ですよね。

三木●そういう全体と個の葛藤という側面が、「FPC」にはよく出ていますね。

太田●制作者が設定したゴールをめざすゲームにするのか、望ましいゴールがなにかを考えるゲームにするのかで、デザインは大きく異なってきます。「FPC」も、「Let’s Kyoto」も、望ましいゴールはなんだろうかと考えてもらうゲーム。ただ「持続可能性」をいうのではなく、なにを持続可能にしたいのかを考えてもらう素材を提供するのが役割。

王●「ネクサス」をもとにルールを最低限に抑えて、最初はこれまでどおりの競争ゲームにしておいて、次に部分や全体の状況を見ながら新しいルールを自分たちで考え、システムがどう動くかを実証的に確認する。そんなことができたらおもしろいですね。

太田●私たちがつくるのはゲームのスターター・キットだけ。

三木●ゲームの最低限のベースだけを渡して、あとはプレーヤーに好きに遊んでもらう。これも教育の一つのあり方かもしれない。「どこが現実的ではないと思う? ではどうしよう」といって議論を喚起したりね。

地球研ならではのゲームづくりをめざそう

三村●寺本さんは研究者のゲームづくりを見て、どう感じていたのですか。

寺本●おもしろいゲームとして成立させることも考えながら、研究のテーマをやさしく伝えようとする配慮があったように思いました。そういった制約を取りのぞいたら、どんなゲームができるのかにも興味があります。

王●それはそれでむずかしそう。(笑)私たちは最初、研究プロジェクトのテーマである水、食料、エネルギーの三つの資源すべてのつながりを理解できるゲームを考えたのですが、いいアイディアはなかなか思いつきませんでした。

遠山●水の問題をゲームに落とし込む、これはたいへんそうですね。

王●それで寺本さんと喫茶店で悩んでいたときに、窓の外をクール宅急便が通ったのです。エネルギーを消費して魚を冷やして運んでいるイメージから漁業とエネルギーのゲームができた。ゲームにするには、環境問題というのはつかみどころがないような気がしていましたが、身近なところにもゲームにできそうな題材がたくさんあるかもしれませんね。

寺本●ゲームで遊ぶことはもちろん楽しいのですが、考えをめぐらせるゲームづくりもおもしろい。その人だからこそつくれるゲームというものがあると思う。そういう作品をもっと見てみたい。

王●モデル化する思考や、本質をとらえるトレーニングをしている研究者は、ゲーム制作にむいている気がします。論文とは別の研究成果の表現として、地球研としてもゲームづくりを奨励したいですね。

遠山●地球研のホームページに、ゲームコーナーをつくりたいですね。

三木●一つのゲームとして成立させるには、首尾一貫した論理ができないといけない。それをきちんと考えることは、とてもいい訓練になりますよ。

王●たしかに訓練になりました。ほんとうに地球研オープンハウスまでに完成できるのかと不安に思いながらでしたが。

三木●若いころ、パズルや詰将棋を自分でつくっていてよかったな、という話。(笑)

王●三木さんがうらやましかった。(笑)

三村●みなさんの今回のゲームは、偶然にも「食」が共通のテーマになっていますが、生産現場や流通の負荷、消費者の行動など、着眼点がそれぞれにちがっていてユニークでした。制作時の具体的な経験を語ってもらったことで、研究者がゲームをつくるハードルも下がったのではないでしょうか。私も挑戦してみたいと思いました。

(2017年11月3日 地球研にて)

地球研カレーをつくろう──食の環境ゲーム

食材を「産地」に取りに行くことで、選ぶ食材による環境への負担の差を体感しながら、日々の食卓で利用する食材についての理解を深めるゲーム。このゲームをとおして、フード・マイレージとカーボン・オフセットという、地球環境問題を理解するための二つの考え方が身につきます(熊澤)

遊び方

 カレーライスの食材を集めるべく入ったのは、「スーパーちきゅうけん」。予算は1,000円(仮想)。ところが、店長はプレーヤーに購入した食材のカードとその産地の地図を渡して、食材を取ってくるように言います。
 カードに記載されている産地(に見立てた地点)は、「地元」から「めっちゃ遠い海外」までを含む5か所。産地で購入した食材のシールを取って帰ると、スタッフはシールに記載された星印の数に応じて、「ニコニコの台紙」、「そこそこの台紙」、「アツアツの台紙」のいずれかを渡します。星はフード・マイレージで、食料の輸送が環境に与える負荷の大きさを示しています。
「アツアツの台紙」を受け取ったプレーヤーは、二酸化炭素排出による環境負荷を埋めあわせるべく、カーボン・オフセットとして基準値を超えた星の数だけ「植林」(台紙に木のシールを貼る)します。

スーパーちきゅうけんでの買いもの

スーパーちきゅうけんでの買いもの

食材の星の数に応じて台紙をもらう

食材の星の数に応じて台紙をもらう

「スーパーちきゅうけん」の食材カード
食材シール
2016年地球研オープンハウスでの食材産地マップ

2016年地球研オープンハウスでの食材産地マップ

Let’s Kyoto

6人以上で遊べる買いものゲームです。プレーヤーは、農家、地場産レストラン、スーパーマーケット、ファストフード店、消費者A、消費者Bのどれかになります。ふだんの生活では知ることがむずかしい、生産や小売の担い手の人たちの視点とニーズを体験することができ、買いものと投票を通じて町のしくみが変わりうることを理解できます(太田)

遊び方

 農家、地場産レストラン、スーパーマーケット、ファストフード店、消費者A、消費者Bの順番で、ゲームのコントローラーが手渡されます。農家は野菜をつくり、値段を決めて売ることができます。地場産レストラン、スーパーマーケット、ファストフード店のプレーヤーは、農家の野菜や輸入品の野菜を仕入れ、それぞれの料理をつくります。消費者A、消費者Bは、これらの店舗から食べものを購入します。最後に町の条例を全員の投票で決めます。この条例をつうじて特定のプレーヤーを指示したり、税金を設定したりできます。条例が決まるとまた農家からスタートです。
 消費者A、消費者Bは、自分の番がきても各四つしか食べものを買うことができません。そのため、農家やスーパーマーケットは、野菜をつくりすぎたり、食材を仕入れすぎたりするとむだになります。消費者に選ばれない購入先も、仕入れの元手がなくなり、町から撤退することになります。買いものと投票は、町のあり方に大きな影響を与えるのです。

じっさいのゲーム画面

じっさいのゲーム画面。ひとつの町を舞台に、農家から消費者までの食べものの生産・流通・消費の流れをシミュレーションする

2017年地球研オープンハウスで子どもたちに遊び方を説明する太田さん

2017年地球研オープンハウスで子どもたちに遊び方を説明する太田さん

FPC(フードポリシー・カウンシル)シミュレーター

10人以上が、2時間ほどで遊べます。プレーヤーは、FPCのメンバーです。農家、学校の先生、医者、行政やNPOスタッフ、卸売業者などの職業になって班に分かれます。そのうえで、同じ班のプレーヤーとともに、その地域、人びと、世界をより持続可能にする、食にかかわるプロジェクトを考案します(太田)

遊び方

 班に分かれたプレーヤーは、「自己紹介カード」に職業といま解決したい食に関する課題やテーマを記入し、班のなかで自己紹介をします。班のまとめ役(FPCの代表)は、班のメンバーに共通する課題(FPCのアジェンダ)を書き出します。
 アジェンダが決まったら、国内外の食に関する優れた取り組みが書かれている「インスピレーション・カード」を引きます。そのカードの取り組みとアジェンダを参考に、食べものや食べ方をつうじて、その地域、人びと、世界をより持続可能にするプロジェクトを考案します。1ラウンドの制限時間は15分、予算は1,000万円。1年間でやることを「活動内容シート」に記入します。
 これを1時間のあいだにくり返します。プロジェクトは、班ごとに発表し、じっさいにやってみたいプロジェクトを全員の投票で決め、得票のいちばん多い班の勝ちです。
 このゲームでもっとも重要なのは、プレーヤーが考案したプロジェクトをよりよいものにしたり、実現するためには、異なる職業や立場の人たちが協力しあったり、いっしょに意思決定する必要があるという点です。また、持続可能な社会を食から考えるプロセスで、ある職業が、食べものや食べ方と意外なかたちでかかわれることを発見することもできるでしょう。

考えたプロジェクトを「活動内容シート」に書き出し、班ごとに発表する

考えたプロジェクトを「活動内容シート」に書き出し、班ごとに発表する

プレーヤーそれぞれがどの職業になるのかを決める

2017年地球研オープンハウスのようす。プレーヤーそれぞれがどの職業になるのかを決める

ネクサス・ゲーム

遠くの高く売れる魚を狙うか、近くの安い魚を狙うのか。エネルギーを節約するか、スピード重視で先取りをめざすのか。魚を残して漁場の回復を待つのか、相手に獲られるまえにすべて獲るべきか。最終的に手持ち金が多いプレーヤーが勝利します(王)

遊び方

 漁師さんになったプレーヤーは、大漁をめざして三つの島から出港します。狙うのは値段のちがう5種類の魚(マグロ、カツオ、ブリ、タイ、サバ)です。海域が遠いほど高く売れる魚がいます。プレーヤーは燃料が切れるまえに島に戻って魚を売ります。

 プレーヤーは出港のまえに船の燃料を購入します。燃料の価格はサイコロの結果で上下します。船を1マス動かすのに1目盛りの燃料が必要ですが、いちどに3目盛りぶんをつかって船の速度を上げると、2マス移動できます。

 最初に漁場に到着したプレーヤーは、サイコロを2個振って漁獲量を決めます。同じ漁場で2回めの漁をする場合は、すでに資源が減っているので、振れるサイコロは1個だけです。1ラウンド中に同じ漁場で2回漁をすると、その海域の資源が枯渇して魚がいなくなります。漁を1回にとどめて次のラウンドに移ると資源は回復して、再びその海域でサイコロを2個振ることができるようになります。

燃料の残りを考慮しつつ、どこで漁をするかを決める

2017年地球研オープンハウスのようす。燃料の残りを考慮しつつ、どこで漁をするかを決める

まぐろ、かつお、さばのカード
ゲーム用通貨
ゲーム用通貨の肖像にはスーツを着た地球犬が!?

ゲーム用通貨の肖像にはスーツを着た地球犬が!?

Fish & Chips

プレーヤーはある地域で暮らす漁師です。獲った魚を市場で売ることで収入を得ますが、自分がたくさん獲っても、漁師仲間もたくさん獲れば市場での相場は下がります。たくさん獲りつづけると、漁獲量自体がなくなります。逆に、獲る魚を減らして出荷される魚が少なくなりすぎると市場が立ちゆかなくなります。プレーヤーは、漁場と市場の両方の存続を考え、ほかのプレーヤーの行動と市場全体の状況を読みながら、魚を何匹獲るかを決めます。多く売り上げたプレーヤーの勝利です(三木)

遊び方

 プレーヤーは4人。各プレーヤーの漁場は環境収容力の最大値である10匹の魚が生息している状態でスタートします。1回のラウンドで、各プレーヤーは出荷する魚の数を決め、その枚数の魚カードを出します。市場に出荷された総水揚げ量で一匹あたりの価格が決まり、収入が得られます。ただし、各ラウンドをクリアするには、①各プレーヤーの漁場に残っている魚の合計が18匹以上であること、②各プレーヤーの売り上げ合計が30点以上であることが必須です。クリアできなければ、全員がゲームオーバー。
 次のラウンドに移ると、漁場にいる魚の数は、残っていた魚の数に応じて増減します。残り4匹以上では増加しますが、3匹以下では減少します。ほかのプレーヤーから魚を購入して自分の漁場に放流することもできます。これを10ラウンドまでくり返します。漁場に残っている魚も売り上げに換算され、売上高の多いプレーヤーの勝利です。

全員がゲームオーバーにならないように、水揚げ量を決める

2016年地球研オープンハウスのようす。全員がゲームオーバーにならないように、水揚げ量を決める

ゲームに使用する魚(Fish)とお金(Chips)

ゲームに使用する魚(Fish)とお金(Chips)

ただいまゲーム制作中!

FEASTプロジェクトでは、オランダのユトレヒト大学の学生グループであるApplesoupと連携して、小学生と中学生を対象に、ふだん自分たちが食べているものが広く世界や学校の給食とつながっていることを学べる、教育目的のオンラインゲームを制作中です。このゲームの日本語・英語版の試作品は2018年に公開される予定です。

スティーブン・マックグリービー(准教授)

制作中のキャラクター

制作中のキャラクター

制作中の町の全景

制作中の町の全景

キャラクターがゲーム世界を歩き回る

キャラクターがゲーム世界を歩き回る

資源管理や意思決定のむずかしさを学べる「Fish & Chips」
資源管理や意思決定のむずかしさを学べる「Fish & Chips」。
環境負荷を考えながら食材を選ばなければならない「地球研カレー」

環境負荷を考えながら食材を選ばなければならない「地球研カレー」

「FPC」(手前)と「Let’s Kyoto」(奥)

「FPC」(手前)と「Let’s Kyoto」(奥)。どちらもふだんとちがう立場から環境問題を考える

ネクサス・ゲーム

食の生産とエネルギーのつながりを体験できる「ネクサス」

おう・ともひろ

専門は資源論。研究プロジェクト「アジア環太平洋地域の人間環境安全保障」プロジェクト研究員。2013年から地球研に在籍。

おおた・かずひこ

専門は環境倫理、食農倫理。研究プロジェクト「持続可能な食の消費と生産を実現するライフワールドの構築――食農体系の転換にむけて(FEAST)」プロジェクト研究員。2016年から地球研に在籍。日本版フードポリシー・カウンシルを研究中。

くまざわ・てるかず

専門は環境計画。研究基盤国際センター准教授。2011年から地球研に在籍。

みき・ひろし

専門は統計物理学。2014年から2017年3月まで研究プロジェクト「地域環境知形成による新たなコモンズの創生と持続可能な管理」プロジェクト研究員。2017年4月から外来研究員。

みむら・ゆたか

専門は建築・都市史、歴史GIS。2012年から地球研に在籍し、2016年からは研究基盤国際センターセンター研究推進員。

とおやま・まり

専門は科学コミュニケーション。学生時代に生命科学研究に携わり、科学館スタッフ、大学の研究所広報を経て2016年10月地球研広報室に着任。

てらもと・しゅん

研究プロジェクト「アジア環太平洋地域の人間環境安全保障」プロジェクト研究推進員。2013年からプロジェクトに在籍。