戦略プログラム

フューチャー・デザインプロジェクト

プロジェクト概要

未来人の視点を取り入れた持続可能な社会の将来ビジョンを形成し、それを社会の中で活用していくための方法を開発することを、目的としています。現在において未来人は存在しないため、未来人の視点を取り入れることは原理的には不可能です。よって、「未来人の視点を取り入れた」という比喩に頼りながら表現しようとしていることを科学的言葉に置き換えること自体も目的としています。

サステイナビリティ・サイエンスにおいて、ビジョン形成のあり方は重要な研究課題です。それは、サステイナブルな社会への変革のためにビジョン形成とそれに基づく戦略策定とが必須であると考えられているからです。しかし、サステイナビリティ・サイエンスは、解決が困難なトレードオフの問題を抱えています。ビジョンがmotivatingであればあるほど、それは社会の中で特定の価値観を持った一部の人たちにしか共有されず、社会変革には貢献できなくなる可能性が高まるという問題です。これを解決する方法論が欠如している状況では、持続可能な社会への変革がうまく進みません。そこで、このプロジェクトは、持続可能的ビジョンの重層的かつ多元的な実装のためのフューチャー・デザイン方法論の構築を最終的なゴールとします。すなわち、人びとが、国のレベルから自治体や一企業のようなミクロのレベルまでにおいて、フューチャー・デザインの考え方を用いて仮想将来人の立場から自由かつ創造的に将来ビジョンをリアルに想像し、そこから今何をするべきかを検討した場合に、それらのビジョン同士が必ずしも整合しなくても、今何をやるべきかについての合意が形成でき、これによって社会全体としては持続可能性が実現する方向に向かっている、そんな状況を実現するための方法論の構築を目指します。

図1:異なる未来のビジョンが共存しうる(=未来人になりきって描いた未来の姿を踏まえて、今おこなうべき施策を決めようとしたときに、異なる未来にいる人達同士で合意形成が可能な)のは、そのビジョン同士がどのような関係を持っているときなのかを示す仮説的な図。ここでは、①協調関係、②緊張関係、③同床異夢関係の3種類が示されている。
なお、公共政策において同床異夢関係の概念を適用するというアイデアはKato et al.(2013)に依拠している
Kato, H., Shiroyama, H., and Nakagawa, Y. (2013). Public policy structuring incorporating reciprocal expectation analysis. European Journal of Operational Research, 233(1),171-183.

研究の進捗状況

これまでにわかったこと

プロジェクト発足当初は、共存しえない多様なビジョンをどのようにして調整していくかという問題の設定をしていました。しかし、研究が進むにつれて、そのような多様なビジョンが社会に蓄積されていること自体に意義があるという考えのもと、そのような状況がどのようにして実現できるかという問題設定を採用するようになりました。「将来人から感謝される社会を作りたい」と願う人たちがフューチャー・デザインを用いて作ったビジョンであるという条件が担保される形で、不確実な将来に対するビジョンが多く作られ、状況に応じながらどのビジョンを選び取るかについてその都度合意形成していく社会を構想しています。フューチャー・デザインの実践のための手引書をつくることをプロジェクトの主要アウトプットとすることで、そのような社会を構想するための素地を作りたいと思います。

年報(業績一覧など)

メンバー

プロジェクトリーダー

中川 善典

総合地球環境学研究所教授/上智大学大学院 地球環境学研究科教授

プロフィール紹介

主なメンバー

加藤 浩徳 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻
小松崎 俊作 広島大学IDEC国際連携機構
井上 裕香子 安田女子大学心理学部ビジネス心理学科
一原 雅子 総合地球環境学研究所 京都気候変動適応センター

外部評価委員による評価(英語)

研究スケジュール

2021年度
(令和3)
2022年度
(令和4)
2023年度
(令和5)
2024年度
(令和6)
FS FR1 FR2 FR3

研究の流れについて

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