近年の森林の急速な劣化・減少により、生物多様性が消失している。本研究の目的は、（1）森林利用によって変化する生物多様性の実態を明らかにし、（2）それらの森林利用や生物多様性の減少をもたらした社会的・経済的・生態学的要因を明らかにする。さらに（3）生物多様性の減少が人間社会にもたらす影響を評価し、それらを基礎として、（4）持続性の高い森林利用のために必要な条件を明らかにすることである。

いくつかの課題は残ったが、おおむね目標を達成した。

プロジェクト全体の成果としては、以下の点がある。

・森林利用の変遷とその要因が把握でき、比較のためのデータ解析が終了した。

・森林の変化が生物多様性に与える影響を評価でき、それを空間的・定量的に示すことが可能になった。

・生物多様性のもつ生態系機能の変化が把握でき、いくつかの調査地域でその変化を生態系機能マップとして図化した。

・生態系サービス（物質的、調節的、文化的）の現状や変化の状況が把握でき、とくに生物多様性はローカル規模の物質、文化的サービスに大きく貢献していることが明らかになった。

・森林や生物多様性の持続的利用を可能にする生態的、経済的、社会的仕組みに関する議論を進め、森林の持続的利用および生物多様性保全に関する問題の評価、解析、対策についての手法を構築した。

・2007年度までに、本プロジェクトに関係して、英文の査読付き論文165編、和文38編、英文書籍21編、和文46編が発刊された。プロジェクトの総合的な成果としては、生物多様性のためのパワポ教材(大学教養部対象) 『生物多様性の未来に向けて(11章)』(地球研・昭和堂、2008年)、書籍『東南アジアの熱帯でなにがおこっているのか』(人文書院、2008年)、『Sustainability and Diversity of Forest Ecosystem』(2007、Springer)、生物多様性写真集(CD版)、プロジェクト最終報告書(2008年)が出版された。