• 実践プログラム3

持続可能な食の消費と生産を実現するライフワールドの構築
─食農体系の転換にむけて

何がどこまでわかったか

日本の食料消費のエコロジカルフットプリント(EF)は、主に輸入食品と加工食品のために、都市部や高齢者の消費でより大きくなっています。食のフットプリントを縮小するには、地産地消が必要です。また、食料生産は、工業的な大規模農業や単一品種栽培から、アグロエコロジーの原則に則った農業に移行すべきですが、日本の新規就農者への支援制度は、工業的農業に偏っており、持続可能な有機農業のための研修はほとんどありません。

地産地消のような分散型フードシステムや、アグロエコロジカルな生産を後押しするための政策が必要です。しかし、食に関する担当部門は多岐にわたるため、統合的な政策の立案は困難です。そこで、ステークホルダーと協働して、日本版フードポリシー・カウンシル(FPC)「食と農の未来会議」を設立しました。ローカル・フードポリシーを通じて、環境と健康を両立する食のあり方を実現できると期待されます。

私たちの考える地球環境学

FEASTプロジェクトの5年間の研究から、持続可能なくらしのためには、フードシステムおよび社会全体に根本的、かつ劇的な変革が必要だということが明らかになりました。地球規模の環境問題の解決をめざす地球環境学には、新しい価値観、これまでとは全く異なる方法、そして成長を是とするのではなく充足感を大切にする経済モデルの検討が必要です。そのためには、研究者と市民の協働による知識の共同生産が重要になります。プロジェクトでは複数回にわたり食と農の未来のワークショップを実施することで、一般市民が、ガーデニング、料理、また単純に食を愉しむための余暇だけでなく、学校、レストラン、コミュニティキッチンでの地産地消推進のための幅広い支援の必要性を改めて認識することにつながりました。

新たなつながり

食べものが環境・社会・健康に与える影響を数値化し評価するアプリ「エコかな」を開発しました(2021年2月16日現在、約180万品登録)。食の消費がどのような影響を与えるか把握できるだけでなく、クリックひとつで食品会社に情報提供を依頼することで、フードシステムをより透明性のあるものへと後押しすることにもつながります。ぜひダウンロードしてください。他には、地球研一般叢書「みんなでつくる『いただきます』―食から創る持続可能な社会」の出版、食をテーマとする地球研国際シンポジウムも行いました。プロジェクト終了後も、市民のみなさんによって食と農の未来会議の活動が引き継がれるだけでなく、本プロジェクトも社団法人FEASTとして、これまでの研究と食のステークホルダーとの協働を継続していきます。

2050年の鴨川周辺の様子
図1:2050年の鴨川周辺の様子。人と自然の共存するポスト成長期フードシステム。(©2021 AOI Landscape Design 吉田葵氏作成)
アプリ「エコかな」
図2:アプリ「エコかな」
QRコード(上:Android、下:iPhone)からダウンロードできます。

プロジェクトリーダー

MCGREEVY, Steven R.
総合地球環境学研究所客員准教授

環境・経済・社会といった多様な側面から、現代の食と農のシステムについて、持続可能性が問題視されています。本プロジェクトでは食の生産と流通の構造の把握や、食と環境を結ぶアプリやブランドの開発、地域の食の未来を構想するネットワーク作りなどをとおして、持続可能な食と農の未来への転換経路の探求を行いました。調査地は、日本(京都府、秋田県、長野県)、タイ、ブータン、中国です。

外部評価委員による評価(英語)

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