<要旨>
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●講演:乾隆年間天山北麓の土地と人民――環境史的視野の中の農業開発
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張 莉(陝西師範大学中国歴史地理研究所、西安、710062)
[摘要]
本報告は新疆の屯田や農業開発、自然環境の変遷に対する先行研究を基礎として、
環境史的角度から、豊富な歴史文献の記載を利用し、乾隆年間天山北麓の農業開発
における人と自然環境との関係の発生、発展および変化の過程について集中的に検
討する。
本報告の第一部分では、天山北麓の自然環境の特徴を概括する。これは、歴史時
代における人と環境との相互作用に対して、基礎的理解を得るためのものである。
第二部分では、乾隆二十三年(1758年)以前における天山北麓の遊牧文化景観を
復元する。
第三部分では、豊富な歴史記事の引用を通し、具体的な事例を取り上げることに
よって、乾隆年間に移住してきた農耕民族がいかにこの土地と接してきたのか、農
業開発はいかに発展してきたのか、内地から持ち込まれた農業耕作制度と技術はい
かに当地の自然環境に適応したのかなど、人と環境との相互作用の過程を微細にわ
たって提示する。
最後に、乾隆六十年(1795年)の天山北麓の地理景観を復元する。これによって、
乾隆年間における天山北麓の地理環境変化が主に平原地区で発生(農業集落とオア
シス農業景観の出現)したものであり、移住してきた屯兵や戸民と天山北麓の自然
環境とが共同で、乾隆末年における天山北麓の地理景観が有する特徴を作り出した
と結論づける。
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●研究報告:ジューンガルの発展とオアシス定住民─いわゆる「ブハーラ人」の役割を中心に─
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小沼孝博(学習院大学)
[摘要]
前半では、17世紀前半にオイラト諸部の中から頭角を現したジューンガル部の
拠点の遷移(南下)とそこでの都市建設の状況を概略しつつ、その南下と天山以
南のオアシス地帯への進出と関連性を指摘する。後半では、それをふまえつつ、
ジューンガルの政治権力とリンクした「ブハーラ人」(17-19世紀の中央アジア・
オアシス定住民を指す。現在のウイグル・ウズベクに相当)の活動、とくに商業
活動について、清朝との交易を事例にして述べる。
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