『琵琶湖−淀川水系における流域管理モデルの構築』プロジェクト |
Research Institute for Humanity and Nature |
ヒューマンインパクトセミナーの記録 |
■ヒューマンインパクトセミナーとは?・・・琵琶湖は持続可能か?
<セミナーの趣旨> 今日、地域レベルでの水質悪化から、地球規模での温暖化や、生物多様性の喪失にいたるまで、深刻な『環境問題』が人間活動によって引き起こされています。このような時代のなかで、これまで生態学者が中心的課題として取り組んできた、『生態系や生物多様性に関する基礎的研究』というものを、環境問題の現場でどのように位置付け、活用すればよいのでしょうか? さまざまな要因のからみあった『問題』には、立場の異なる人々がさまざまなアプローチでかかわり合っています。そのため、人々のあいだでは、「問題設定」のしかたが異なり、また、コミュニケーションのための「共通の言語」を持っているとも限りません。 生態学は現場に根ざした「問題設定」を持ち、問題に対処すべき固有の「スケール」を意識し、その解決に対して有効な視点や具体的なツールを提供できるのでしょうか? 生態学に根ざしつつ、他の立場の人たちと理解を共有できる「共通の言語」で語るためには、どのような枠組みで研究を進め、どのように発信すればよいのでしょうか? わたしたちは生態学に関わるものとして、このような問いに答えるためには、まずいちど、「生態学」を、あるいは生態学者が行ってきたことや行いつつあることを、「人間をとりまく環境」という具体的な文脈からとらえなおす必要があると感じています。「ヒューマンインパクト(人為的撹乱)」セミナーは、その機会を主催者自身が必要と感じ、またこのような問題に関心のあるすべての参加者にその機会を提供したいという気持ちから2002年度より京都大学生態学研究センターと総合地球環境研究所(プロジェクト3-1)が共同で、各分野から専門の先生を講師としてお招きして、セミナーを開催してまいりました。
<“琵琶湖シリーズ”講演について> 琵琶湖は自然誌の上だけではなく、人との関係においても非常に古い歴史をもっており、世界的にみても、もっとも生態系とヒューマンインパクトとの関わりを考えるにふさわしい場のひとつであるといえます。 琵琶湖生態系の構造と状態は近年大きな変化を示しており、さまざまなわれわれ人間の営みの変化がその原因として指摘されています。その具体的で現実的な解決の道を探るためには、人間活動と生態系の間の因果関係(メカニズム)と同時に、人間活動がどのように、またなぜ変化してきたかなど広い知識の獲得と交換が必要であると考えております。 このシリーズでは琵琶湖生態系で見られる特に顕著でかつ深刻と考えられる現象を複数取り上げ、それぞれについて生態学・人間活動の両分野から専門の方に講演いただき、両面から の理解と議論を深めたいと考えました。
セミナー開催記録 注:発表者の所属は発表時のものを記載しています
◆1年目:2002年度(平成14年度) 第1回 2002年6月14日 三橋弘宗氏(兵庫県立人と自然の博物館 流域生態研究グループ) 「博物館と自然環境情報 −自然史研究から地域生態系保全へ−」
佐藤 仁氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科 環境学専攻 国際環境基盤学講座 助教授)
第3回 7月26日 原 雄一氏(パシフィックコンサルタンツ(株) 水工技術本部 流域情報部)
第4回 9月27日 藤倉 良氏(立命館大学 経済学部)
第5回 10月11日 内藤正明氏(京都大学大学院工学研究科教授(環境地球工学)。同大学院・地球環境学堂・学舎長(併任))
第6回 11月08日 大西正幸(名桜大学国際学部国際文化学科)
第7回 12月13日(金) 琵琶湖スペシャル 戸田直弘氏(滋賀県守山漁協) 中井克樹氏(琵琶湖博物館主任学芸員)
第8回 2003年1月24日(金) 内山純蔵氏(富山大学人文学部) 「永遠のトラブルメーカー?:長期的視点からの人間・環境系」
◆2年目:2003年度(平成15年度) 第9回 5月9日 竹門康弘氏(京都大学防災研究所水資源研究センター) 「砂洲の生態系機能に関する研究」
第10回 6月6日 中村浩二氏(金沢大学・自然計測応用研究センター・理学部(兼務)) 「里山・地域・大学:金沢大学「角間の里山自然学校」の試み」
第11回 11月28日 五十嵐敬喜氏(法政大学法学部) 「美しい都市」
第12回 2004年1月23日 横山俊夫氏(京大大学院・三才学林・地球文明論) 「安定社会を生きる−前近代日本の経験から−」
第13回 2月13日 小倉紀雄氏(東京農工大学名誉教授) 「市民環境科学について考える―水環境保全に果す市民と専門家の役割」
◆3年目:2004年度(平成16年度) 第14回 2004年9月16日 「治山・治水と河川水生生態系再生のあり方について」
第15回から、「琵琶湖は持続可能か?」シリーズ 第15回 2004年10月22日 嘉田由紀子氏(京都精華大学人文学部環境社会学科) 「水利用と湖岸の開発−環境社会学の立場から−」 野崎健太郎氏(椙山女学園大学人間関係学部人間関係学科) 「琵琶湖北湖における植物プランクトンおよび底生藻群落の変遷」
第16回2004年11月26日 須戸幹氏(滋賀県立大学・環境科学部) 「農業活動が琵琶湖集水域の水質に与える影響、特に代かき濁水と農薬について」 濱端悦治氏(滋賀県琵琶湖研究所) 「琵琶湖岸における植物群落の変化とその要因」
第17回2005年1月20日 渡邉紹裕氏(総合地球環境学研究所) 「琵琶湖集水域における近年の農業水利システムの展開」 遊磨正秀氏(京都大学生態学研究センター) 「淡水環境の変遷と淡水生物の応答:琵琶湖周辺を事例に」
ヒューマンインパクトセミナー・スペシャル(生態研セミナーと共催) 2004年10月28日 Stephen R. Carpenter (Center for Limnology, and Department of Zoology, University of Wisconsin-Madison, USA) "Carbon Cycling in Lake Districts: Terrestrial Subsidies to Lakes"
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