『琵琶湖−淀川水系における流域管理モデルの構築』プロジェクト

Research Institute for Humanity and Nature

プロジェクト紹介

■研究の目的と内容

1.研究の目的

本プロジェクトは、琵琶湖−淀川水系において、地域住民と行政が主体となり流域管理をおこなう上で必要な環境診断と合意形成の方法論を、多様な分野を横断して行う総合・学際的な研究活動と、地域住民や行政との連携による実践をもとに、開発・検証していくことをめざしています。

流域は、水循環・物質循環や生態系管理の上で重要な空間単位ですが、河川の分布パターンに見られるように、階層的(入れ子的)な空間構造を持つため、人間社会とその社会的意思決定も、多くはこの空間構造にあわせて階層化されています。
流域はこのように階層性という特徴をもつため、しばしば、階層間においては状況認識のズレを生み出し、流域単位での社会的意思決定を困難にしてきました。

本プロジェクトでは、この階層間の状況認識のズレの克服、より具体的には、
1)流域管理におけるボトムアップからの流域環境の目標像作成の支援
2)トップダウンによる政策との調整が、流域管理における最重要課題である
と考え、この目的に役立つ方法論を開発することを具体的な目標とします。また、その成果をもとに、琵琶湖―淀川水系の流域管理に対して具体的に提言します。

 

2.研究の内容

流域の階層性を考慮した流域管理の理念的な姿として、『階層化された流域管理システム』というモデル(考え方)を提案し、琵琶湖―淀川水系における実践的な研究活動の中で、その有効性を検証します。
琵琶湖流域においては、社会的意思決定に関わる、大きく3つの階層(マクロ、メゾ、ミクロ)を区別します。マクロスケールとして、「滋賀県(琵琶湖流域)」、メゾスケールとして、滋賀県湖東地域の農村地帯である「彦根市稲枝地区(愛西土地改良区)」、ミクロスケールとして、彦根市稲枝地区の中の集落群を想定します。
この
3者を主な調査対象地域とし、「物質動態」、「社会文化システム」、「生態系」、「流域情報モデリング」の4班を設け、その連携によって、水質を中心にした水環境保全に関わる、総合的な流域管理の研究・実践を展開します。各階層内で、階層の個性に応じて、モデルや指標などの流域診断ツールを開発・使用して、「順応的管理」(adaptive management) が行われる可能性を探るとともに、階層間の認識の違いを解消するための、階層間の流域に対する現実感(reality)・論理の違いを共有する方法論の構築をめざします。具体的には、農業排水による流入負荷に着目し、メゾ・ミクロスケールにおける環境保全活動の支援と、マクロな琵琶湖への負荷削減が両立する方法を、実践の中から求めていきます。

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