9月 『琉球国図』に関する調査(於福岡)

 沖縄県立博物館に所蔵されている『琉球国図』は、福岡藩士・竹森道悦が絵師・熊本円齋と共に書写して元禄9(1696)年に太宰府天満宮へ奉納したものです。しかしこの図に描かれているのは、15世紀半から16世紀半ころの琉球国の姿です。今回の調査では、九州大学、福岡市立博物館、福岡県立図書館などを訪問し、『琉球国図』を作成・奉納した竹森道悦関係の史料を調査しました。また太宰府天満宮を訪れ、地図が奉納されていた場所(太宰府天満宮文庫)の位置を確認しました。

参考文献
深瀬公一郎・渡辺美季「沖縄県立博物館所蔵『琉球國圖』」
(トカラ科研成果報告書/課題番号13410100/研究代表者:高良倉吉『琉球と日本本土の遷移地域としてのトカラ列島の歴史的位置づけをめぐる総合的研究』琉球大学法文学部、2004年3月)


太宰府天満宮文庫の跡地と思われる地点にて

10−11月 宮古島における漂着関係遺跡の調査(於沖縄)

 沖縄本島のおよそ300km南西に位置する宮古諸島は、歴史上、多くの海難事件の舞台となった地です。しかし漂着関係の史料も含め、宮古の在地史料は相対的にあまり多くありません。そこでこの文献不足の穴を埋めるべく、今回は宮古に数多く残されている漂着に関する遺跡を中心的に調査しました。特に船の通航を監視し、航行する船隻が浅瀬に乗り上げないように烽火をあげたり、漂着船や異国船などを発見していち早く役所に連絡したりといった役目を担っていた島内各地の遠目(遠見)番所を精査できたことは今回の調査の大きな成果でした。

参考文献
渡辺美季「近世琉球における対「異国船漂着」体制−中国人・朝鮮人・出所不明の異国人の漂着に備えて−」
(琉球王国評定所文書編集委員会編『琉球王国評定所文書
補遺別巻』浦添市教育委員会、2002年1月)


島尻遠見跡より大神島を望む(=遠目番役の可視範囲)


狩俣遠見跡の方位石(方位を示す線が刻まれている)


池間遠見跡と方位石