2月  徳之島町母間 (ぼま)地区の墓地

 2005年2月、鹿児島県大島郡徳之島町の民俗調査に参加させていただく機会を得た。筆者は大当(おおあたり)集落所在の共同墓地を踏査することができたので、ここに紹介させていただきたい。徳之島には仏教の影響が現代まで及ばなかったことと、当地区にカトリック教会が所在し布教がなされたことなどから、キリスト教式の墓が目立つ。また、墓標の材質も、島で産出する珊瑚石(石灰岩)製、甲突川中流域(鹿児島市)の産地名から、「小野石」または「河頭石(こがしらいし)」と通称される溶結凝灰岩の一種、揖宿郡山川町で産する黄褐色凝灰岩の一種「山川石」など、薩摩から運搬されてきた石材を使用したもの、キリスト教の十字架型墓標はコンクリート製、木製があり多様である。近年に建立されたものはほとんどが花崗岩製である。このように、墓地の様相からも当地区の多様性と歴史性を垣間見ることができる。