台湾原住民調査 (2004年8月10日〜8月18日)

1.順益台湾原住民博物館(台北市士林)

 台湾で最も有名な原住民博物館。順益企業公司副董事長・林清富氏個人蔵の原住民の民具などを多数展示している。原住民の日常生活に関する初歩的な知識を得るのに最適であり、原住民研究を志す人には是非とも訪れていただきたい場所。

2.苗栗県三湾郷

 清代嘉慶年間(1796-1820)の著名な「番割」=原住民・漢人間の交易仲介者であ  る黄祈英(黄斗乃)が開墾・活動した地域である。三湾郷内の斗換坪には原住民と漢  人の交易地があった。調査者(林)は現在、この「番割」に興味を持っており、今後継続的に調査を進めていく予定である。陳運棟氏の研究によれば、黄祈英(黄斗乃)の末裔が今なお存在し、族譜・位牌を保持しているそうである。
 今回の調査は三湾に入り、景観調査を行うにとどまった。山岳地帯と平原地との交界に在って、山岳地帯に住む原住民(賽夏族、サイシャット族ではないかと考えられ  る)と平原地の漢人との交易に適した地点に位置していると感じた。

3.南投県魚池郷日月村

 邵(ショウ)族文化村を訪れた。邵族は日月潭付近の徳化社に住む原住民。現在認定された原住民の中では最も人数が少ない。清代には「水沙連番」或いは「水社番」と呼ばれた。雍正年間(1723-1735)に反乱を起こし鎮圧された後には、「化番」と呼ばれるようになった。
 台湾原住民独自の文化を“復興”するために設けられた文化村では、民族舞踊の演  出などを行っている。また、国民党統治初期の邵(ショウ)族毛王爺(毛信孝)の居所=「毛王爺之家」も保存されている。

4.南投県真義郷潭南村

 潭南村は布農(ブヌン)族?社群の村落である。中部山岳地帯に位置し、急斜面に家屋が密集する。現在、原住民の文化“復興”の影響もあって、村落内部には「望楼」や石板屋が建設され、石垣には原住民の生活が描かれている。
 この村の人々の多くは基督教長老派を信仰しており、立派な教会が建てられていた。村人は農業・養殖業を生業としており、調査者が見たかぎりでは、村内には雑貨店が僅かに一軒しかなかった。今回は景観調査にとどまったが、今後は先行研究をおさえつつ、文献史料の収集にもつとめたい。


布農(ブヌン)族潭南村の「望楼」


布農(ブヌン)族潭南村の石板屋


調査者と布農(ブヌン)族の女性(右)


布農(ブヌン)族潭南村の教会


潭南村内部の石垣に描かれた、かつての布農(ブヌン)族の生活