江南デルタ調査(2004年12月21日〜12月30日)

 調査者は冬季休暇を利用して、江南デルタ(現在の上海市・江蘇省南部)の太湖流域農漁村において文献資料調査のほか、漁民調査・景観調査を実施した。

 12月22日:午前・午後を通じて、蘇州科技学院・朱小田氏の自宅にて、近年続々と出版されている新編地方志、特に鎮志の撮影を行った。鎮レヴェルの地方志は情報が詳細で有用性は高いものの、出版部数も限られており、一般の販売ルートに乗る可能性も少ないため、入手しにくいからである。この日は『盛沢鎮志』『平望鎮志』『黎里鎮志』『周荘鎮志』『楓?鎮志』『洞庭東山志』等を撮影した。

 12月23日:今回の調査県にあたる呉江市の図書館に赴き、多数の呉江市下の市鎮に関する文献資料を閲覧・収集した。

 12月24日:蘇州市?案館の傍らに在る楊家橋教堂を訪れた。太湖流域の漁民の場合、カトリックを信仰する者が多いからである。また、24日に同教堂を訪問したのは、当然にミサが行われ、老漁民が多数参集するに相違ないという予想があったからである。そして予想に違わず、周辺の漁民が多数来堂し、現地語で行われたミサに熱心に参加していた。しかし今回の訪問では漁民に直接採訪せず、許建国聖父から話を聞くに止めた。次回の調査では老漁民を紹介してもらうこととなっている。

 12月25日:午前中に呉江市黎里鎮の天主堂へ行った。前日の楊家橋教堂と同様、聖父に会い、次回の漁民調査の約束をとりつける予定であったが、残念ながら会うことはできず、天主堂の外観を見、黎里鎮を散策するのみとなった。午後は、漁民の信仰対象となっていると考えられる、上方山国家森林公園内の上方山大老爺廟へ行った。蘇州の上方山信仰は今後継続調査する必要がある。

 12月26日:午前、八?鎮龍津村の宣巻藝人朱火生氏の自宅へ行き、宣巻の台本=宝巻を閲覧した。その後、白龍橋村九組へ赴いて宣巻活動を見学した。宣巻は漁民を中心とする廟会などでも行われており、宣巻藝人の活動と漁民との関わりは研究テーマたりうると考えている。午後には八?鎮城隍廟を参観した。乾隆三十九年四月の「奉憲永禁悪丐」碑を?発見?した。

 12月27日:午前、金伯?氏の案内で太湖東山鎮へ行った。最初に軒轅宮を参観。湯斌(湯文正公)が祀られていたのには驚いた。淫祠を壊した人物が?神?となっていたからである。続いて紫金庵、彫花楼を見学。後者には劉猛将も祀られる。猛将会の台閣は興味深い。午後には同じく太湖の西山鎮へ向かった。まず光福鎮へ行き、司徒廟を見学。その後、西山大橋をわたり、漁民の信仰対象である禹王廟を参観した。最後に、太湖漁業の状況を観察した。

 12月28日:蘇州市方志館へ行き、史料収集を行った。


[写真1]ミサの飾り付けが美しい蘇州市の楊家橋教堂(2004.12.24)


[写真2]教堂入口に停泊する漁民の船。


[写真3]太湖漁業。