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ユーラシア農耕史と環境
総合地球環境学研究所プロジェクト
農業が環境を破壊するとき
事務局
目的
農業はおよそ1万年まえに,世界の何箇所かで始まった.農業が始まることで,農地と周囲の生態系を次第に人為生態系(「里」)へと作り変えていった.農業人口が増えると,野生の動物や狩猟採集民はしだいに辺境の地へと追いやられ20世紀にはその大部分が姿を消した.その結果,農業がひきおこしたさまざまな環境問題は地球規模での問題となった.一方,農業生産はこの1万年の間にもしばしば崩壊を経験し,それにより社会や文化は大きな歴史的転換を迎えたとも考えられる.

農業生産を落ち込ませた原因として,従来,気候変動などの自然要因のほか,民族移動などの人類学的要因がとりざたされてきた.しかし,環境と農業の関係は特定の要因によって説明できるほど単純ではなく,さまざまな問題が複雑に絡まりあっている.さらに,今までほとんど注目をあつめることがなかった「遺伝的多様性の喪失」がおおきな鍵を握ってきたケースが意外と多いと思われる.たとえば19世紀のアイルランドにおけるジャガイモの疫病による壊滅とそれによっておきた大飢饉,さらに引き続いて起きた人口流出の事件はその典型的事例である.本プロジェクトでは,遺伝的多様性の喪失を軸として農業と環境の関係を徹底的に洗い出し,遺伝的多様性をキーワードとする「環境と農業の1万年関係史」を描き出す.

また,農業をめぐる本源的問題として,人はなぜ農業を始めるようになったか,など,農業の根幹にかかわる問題についても議論を深めたい.

●研究方法

●研究内容

イネ japonica rice・indica rice
イネは私たち日本人にとって最も馴染みがある作物ですが、東アジア・東南アジアのモンスーンでも重要な役割を果たして来ました。私たちにとってイネは水田で作られるものというイメージがありますが、畑や焼畑でも作られます。稲作はどこでどのようにして始まり、環境にどのような影響を与えたのでしょうか。イネの品種の多様性は生産の安定性とどのように関わってきたのでしょうか。私たちは栽培稲のみならず、野生イネも視野に入れながら稲作史を考えていく予定です。
ムギ weat・barley・rye・oat
ムギ類には穀物として生産量世界第一位のコムギや、ビールの原料になるオオムギ、そしてライ麦やエンバクなどが含まれます。世界の農業環境を大きく変えてきたといわれるムギ農耕ですが、約1万年前に西アジアで発祥して以来、どれほど環境にインパクトを与えてきたのでしょうか。本プロジェクトではこの問題を明らかにするために、生物学・歴史学・民族学など多面的な手法から研究を行ないます。
イモ tuber crops
根菜農耕は、アジアや太平洋の島嶼部で発展してきましたが、種子農耕に比べてあまり理解が進んでいません。イモ班では、根菜農耕がいつどこで起源し、どうやって広がったのか、環境の変化と動関わってきたのかについて、考古遺物や花粉、DNA,分析、民族植物学的手法で明らかにしていこうとしています。
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