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日本列島における人間-自然相互関係の歴史的・文化的検討

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地球研年報(業績一覧など)

プロジェクトリーダー

湯本貴和 京都大学霊長類研究所(総合地球環境学研究所 2012年3月迄)

研究プロジェクトについて

日本列島の自然は、縄文時代から徹底して人間活動の関与を受けています。それにもかかわらず、多くの植物の固有種をもち、大型陸上哺乳類を生息させてきました。近年、多くの生物が急速に絶滅の危機に直面しています。このプロジェクトでは、これまで日本列島に住む人々がどのように自然と関わってきたのかを歴史的に十分な証拠に基づいて検討し、持続的な生物資源利用のあり方を提案します。

 

何がどこまで分かったか

日本列島では生物資源の持続的利用も、その破綻もありました。生態系や個々の生物に関する優れた知識や技術があっても、自動的に「賢明な利用」が達成されるわけではありません。優れた知識と技術は、生物資源を枯渇させないような利用を導く場合もあれば、狙った生物を獲り尽くす場合もありました。そこで重要なのは、知識や技術の使い方を決めるガバナンス、あるいは生物資源の持続を望む「人間の意志」です。地域の生態系を地域の住民が利用する場合には自主的な管理のインセンティブが高まり、外部者が利用する場合には持続的に利用しようという動機付けは低くなります。そこで「地の者」の役割が強調されます。すなわち積極的に自らの住まう場所の運命を選びとり、自らの行為の帰結を引き受ける覚悟を決めた「地の者」こそが、土地のスチュワードシップをもつにふさわしいものです。環境ガバナンスはトップダウン的になされるよりも、ボトムアップ的に地域の自然と生活に密着したかたちで取り組まれるほうが実効性を持ちうることになります。科学的知識による技術革新にしても、「地の者」が持続的利用を意図しない限りは、自然を搾取し尽くす側に加担する可能性が高いということがプロジェクトを通した結論です。

 

地球環境学に対する貢献

現在進行中の地球環境問題は、地域の自然風土に適した環境負荷の低いライフスタイルが、世界規模の物流革命のため地域によってはきわめて高い環境負荷をもつライフスタイルに置き換わりつつあることから生じています。日本列島における多様な自然環境での人間の営みとその帰結の連鎖を解明し、過去数百年にわたる歴史から培われてきた、地域の再生天然資源の枯渇や、生態系サービスの劣化を回避してきた「賢明な利用」とそれを実現する環境ガバナンスを発展的に継承することが、環境負荷を抑えた、しかも豊かな生活を実現する未来可能性につながると考えています。

 

成果の発信

2010年10月に名古屋で開催された生物多様性締約国会議COP10では、国連大学高等研究所が主宰した里山・里海サブグローバルアセスメントに参加し、その成果は 『日本の里山・里海評価(JSSA)』(概要版)として公表されています。プロジェクト全体の成果をまとめて、2011年1月からシリーズ『日本列島の3万5千年』として6冊本で出版しました。

  図 日本列島過去2000年間の社会・人口と人間-自然関係の変化(クリックで拡大)
日本列島過去2000年間の社会・人口と人間-自然関係の変化

 

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