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地球規模の水循環変動ならびに世界の水問題の実態と将来展望

プロジェクトリーダー

鼎信次郎 東京大学生産技術研究所(総合地球環境学研究所 2007年3月迄)

研究プロジェクトについて

21世紀は「水の世紀」とも呼ばれ、人口増加や地球規模の気候変動に伴う水不足が懸念されます。石油を巡って争われた20世紀に対し、21世紀は水を巡る争いになるとまで言われることもあります。この水問題に対し、世界各地での現地観測や調査研究をグローバルな視点で結び付け、自然の水循環、それを利用している人間社会の実態を明らかにし、世界の水問題の本質を見極め、水という側面から未来可能性のある社会の構築への道筋を示すことを試みました。

 

何がどこまでわかったか

「実態を明らかにし将来展望を描く」という最大目標に関しては、世界でもほぼ最先端の世界水循環・水需給の推定を行い、それらの将来展望を行うことに成功しました。例えば地球水循環に関しては、過去100年(1901-2000)の日々の陸域水文量(流出、蒸発、土壌水分、積雪、洪水・渇水等々)の変動を世界で初めて再現し、同時に将来100年についても幾つかの手法により推定値を作成しました。また、現在および将来100年の世界の水需要量も推定し、それらを統合することによって、現在および将来の世界の水逼迫度を算定しました。

 

地球環境学に対する貢献

本研究は自然と人間の相互作用を視野に入れつつ、地球規模の水循環を明らかにしました。これまで地球の自然水循環に関する研究は多数ありましたが、人間活動の影響はあまり考慮されていませんでした。この意味で人的要素を加味した我々の研究は、自然と人間の相互作用を重視する、いわゆる「地球環境学」的研究の一例になり得ると考えられます。またグローバルな視点だけでなく、具体的な地域(タイ、カリフォルニア)の水問題を対象とした研究も進めました。そこでは水問題解決に向けた具体的な政策の分析が行われ、この点でも文理融合的な研究が進められました。

 

成果の発信

前リーダーがIPCCおよびミレニアムアセスメントのリードオーサーであることから、IPCC/AR4への成果反映が期待されます。また、Scienceの淡水特集の冒頭を飾ることによっても国際社会に向けて大いに成果を宣伝しました。また特にVirtual Waterに関する我々の成果図が、幅広くマスコミに取り上げられたこともあり、国内向けの成果発信も十分に達成できたと考えております。最後に、今後、水関係のプロジェクトが立ち上げられた際、我々の作成した図が何らかの発想の種になってくれれば幸いです。

 

図:水ストレス指標(将来予測)
この図に示されているのは「2050年に、それぞれの地域で使用している水の量」を「2050年に、それぞれの地域で使用可能な水の量」で割った値である。この値が大きいところ(黄色や赤色のところ)は、水をほとんど使い果たすと予想されるところであり、いわゆる世界水危機の「ホットスポット」の候補地である

 

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