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大気中の物質循環に及ぼす人間活動の影響の解明

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プロジェクトリーダー

早坂忠裕
 東北大学大学院理学研究科附属大気海洋変動観測研究センター(総合地球環境学研究所 2008年6月迄)

研究プロジェクトについて

気候変動への人為的影響を評価する上で重要な温室効果気体やエアロゾルの分布と変動の将来予測を正確に行うためには、様々な人間活動と温室効果気体およびエアロゾルの排出、分布と変動の関係を解明することが重要です。本研究では、経済発展が目覚ましい最近約20-30年間の東アジア地域を中心に、(1)各国、各地域の経済、産業、社会の変化と大気中への人為起源物質の排出量の変化の関係解明、(2)大気中に排出された人為起源物質の気候変動並びに大気環境汚染への影響の解明、を目的として研究を実施しました。

 

アジアの経済発展と各種物質の排出量

工業化によるアジア諸国の経済発展は、エネルギー消費量や温室効果気体、エアロゾル等の排出量を増加させました。SO2に関しては、予想されていたほどに排出量は増加していません。CO2に関しては、エネルギー効率の上昇により、排出密度はほぼ横ばいか、もしくは低下しています。この傾向は、「後発」諸国が国際競争に勝ち抜く必要性や、環境意識の高まり、直接投資、開発援助を通じた技術移転などによって促進されてきました。しかしながら、今後、CO2の排出が増加するか否かは、経済成長と排出密度の低下と、どちらの速度がより大きいかに依存します。

次に、アジア域における1980-2000年の燃料消費量と大気中への物質(SO2、NOx、CO、BC、OC、NMVOC、NH3、CH4、N2O、CO2)の排出量を推計しました。アジア域における燃料消費量は20年間で倍増し、それに伴って、大気中への物質の排出量も1.2倍(BC)-2.3倍(NOx)に増加しています。特に、中国における増加傾向が著しく、20年間におけるNOx排出量の増加率は約3倍にもなることが示されました。

 

温室効果ガスとエアロゾル

大気輸送モデルを用いた日本上空のCO2濃度長期データの再解析から、大気境界層の上の2-4 kmの高度では中国の排出の影響を強く受けることが示唆されました。この結果から、1990年代半ば以降については中国政府が発表している石炭等化石燃料の消費量の経年変化と大気中の濃度変化は整合性がないことが示唆されました。また、中国国内7箇所でCO2とCH4の観測を実施し、年平均のCO2濃度は日本よりも数ppm高く、季節振幅も大きいことが明らかになりました。

エアロゾルの観測を福江島、奄美大島、沖縄等で実施した結果、全般的に東アジアのエアロゾルはBCの割合が多く、光吸収が強いことが分かりました。中国における石炭およびバイオマス燃料が関係しているものと思われます。

 

地球環境問題の解決に向けて

本研究の成果は、アジア域の大気環境や気候変動の将来予測、および国際的な地球環境問題の解決に貢献するものと期待されます。

 

図:アジア各国・各地域のSO2、NOX、BC排出量の経年変化

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