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亜熱帯島嶼における自然環境と人間社会システムの相互作用

プロジェクトのホームページ

地球研年報(業績一覧など)

プロジェクトリーダー

高相徳志郎 琉球大学熱帯生物圏研究センター(総合地球環境学研究所 2009年3月迄)

研究プロジェクトについて

島嶼は、水不足、土壌流出、生物多様性の消失、ゴミ問題等、様々な問題を抱えており、大気汚染、海洋汚染といった 島外に起因する環境問題にも直面しています。プロジェクトの目的は、島嶼における環境問題を多角的に理解し、これを 基に環境問題の解決に資する指針を提供することでしたが、これを亜熱帯の代表的な島である沖縄県、西表島をモデル として展開しました。

 

何がどこまで分かったか

水収支・水質の研究では、継続的研究を基に雨水、河川水の量と質の貴重な資料が得られ、生活用水、農業・観光用水等の用途別利用の研究に活用しています。森林研究についても継続的研究から、常緑広葉樹林、リュウキュウマツ林の遷移過程の理解が深まりました。台風の森林更新での役割が明らかにされましたが、巨大台風は森林崩壊をもたらす危険性もあり、長期調査の重要性を認識しました。住民の生活基盤として極めて重要な観点である経済学については、特に、物流のあり方、環境税の導入が可能かについて研究を進めました。経済関連の統計資料のデータベース化も進めました。地域意志決定の研究では、地域行事に参加し、可能な限り地域住民と接する機会を持ちましたが、地域社会が極めて多様で複雑であること、公民館の役割が大きいことを再認識しました。また地域研究の成果を地域に紹介することの重要性を認識しました。

 

図 学校教育(ウミショウブ観察会)

 

地球環境学に対する貢献

西表プロジェクトでは、地域密着型の研究を展開したことが特徴ですが、これを基に以下の点を確認しました。1)未来に希望と発展を持てる地域社会を構築するためには、生活基盤を確固なものにした上で、地域住民が地域に対する誇りをより高めること、また自然環境に対する知識をより深めることが極めて重要であること。2)地域での問題解決には、地域住民を主とした全ての関係者(組織)による問題解決のための合意形成が必須であること。また、3)地域で得られた研究成果、特に自然科学の研究成果の地域への紹介が極めて重要であること。

研究を進める過程で直面したことですが、地球温暖化の一つの現象と考えられている台風の巨大化が、現実問題として進行しており、亜熱帯の森林生態系(結果として海の生態系も)を根本的に変えてしまう可能性を持っていることの警告を発することができました。台風の大型化は、産業、とりわけ農業に大きな影響を及ぼすため、これに対応した研究を早急に展開することが強く望まれます。

 

成果の発信

プロジェクトでは研究成果を学校教育、社会教育の場で紹介してきましたが、紹介の継続は重要なため、これを推進します。この際に、プロのカメラマンに業務委託をして得られたイリオモテヤマネコの行動、地域行事等の膨大量のビデオ・写真を、プロジェクト期間同様に活用します。

研究を基にした科学映画の制作、本の出版を計画しています(既に、数本の理科・社会科教材ビデオを制作)。

プロジェクトでは西表島に関連した研究論文、書籍、新聞記事等のタイトルをインターネット上で公開しています(ホームページを参照)。これによって類似研究が避けられると自負しています。

プロジェクトでは、地域住民との間に築いた密接な関係と研究成果を活用する形で地域産業の振興に貢献しようとしています。具体的には、研究成果をエコツーリズム、自然ガイド養成等に活用します。

竹富町は西表島の世界自然遺産登録と生物圏保存地域登録を進めていますが、プロジェクト成果をこれらに活用します。

西表映像ライブラリー:人と自然 (http://www1.gifu-u.ac.jp/~kawakubo//iriomote/index01.html)