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環境問題認識システムの開発と新しい地球環境観の形成─「化学的不均衡」を乗り越えるために

FS責任者

半藤逸樹 総合地球環境学研究所

主なメンバー

BAUM, Seth Global Catastrophic Risk Institute
RODERICK, Peter Planetary Boundaries Initiative
大西健夫 岐阜大学応用生物科学部
松井一彰 近畿大学理工学部
水川薫子 東京農工大学大学院農学研究院
塚田眞弘 新潟県立環境と人間のふれあい館
香坂 玲 金沢大学大学院人間社会環境研究科
仲山 慶 愛媛大学沿岸環境科学研究センター
北村真一 愛媛大学沿岸環境科学研究センター
辻村優英 神戸大学経済経営研究所
河合 徹 国立環境研究所環境リスク研究センター
豊田知世 島根県立大学総合政策学部
高村ゆかり 名古屋大学大学院環境学研究科
檜山哲哉 名古屋大学地球水循環研究センター
高菅卓三 (株)島津テクノリサーチ

研究プロジェクトについて

化学汚染(残留性有機汚染物質・農薬・重金属・放射性核種)、地球温暖化、海洋酸性化などに代表される地球環境問題は、特定の化学物質の流れが変わり、非人為あるいは人為起源の「化学的不均衡」として現れ出たものです。本FS の目的は、研究者がさまざまなステークホルダー(利害関係者)と問題認識システムを共同開発し、そのシステムによって「新しい地球環境観」の形成を促し、人類が真に化学的不均衡を乗り越えるための規範を提示することです。

なぜこの研究をするのか

「地球環境問題の根源は、人間文化の問題にある」という地球研が掲げる命題に表現されるように、人類は、「化学的不均衡」(人間と自然系の相互作用環の不具合)を人間中心主義のルール(環境訴訟や国際条約)におき換え、根本的な問題解決から遠ざかっています。近年、環境運動は人権・平和に関する諸運動と結びつき、ひとつになっていく機運があるものの、「加害者 vs 被害者」あるいは「一部の富裕層 vs その他」という構図はいまだに存在します。

地球環境問題のステークホルダーは地球に暮らすすべての人々です。誰もが環境問題解決の方法や地球環境のあるべき姿に意見を述べ、意思決定に参加すべきだと認識しています。研究者が調査地域やステークホルダーを選ぶのではなく、誰もがステークホルダーとして地球研の研究成果やさまざまな環境情報や価値観を認識することができるしくみが大切だと考えています。化学的不均衡に関する地球規模の環境情報を共有するだけでなく、価値の多様性を認め、個人個人の環境観が、人種・宗教や経済格差を超えてつながっていることを認識できるシステムの開発に着手しています。

これからやりたいこと

本FS は、「個々の問題に対して意図的に生み出された情報格差が、問題解決と多様な環境観の共存を妨げている(性悪説ガバナンス)」、「環境情報(事実)と、それにかかわる個人の環境観(価値)を統合し、地球規模での新しい価値形成を促進する善意のシステムを提示することで、クラウド・ガバナンス型の地球環境運動が起こる(性善説ガバナンス)」という2 つの作業仮説を検証するために必要なシステムを開発します。具体的には、次の流れで研究を行ないます:①化学的不均衡に関する環境訴訟・環境運動から生まれた環境法・国際条約と環境観の検証とデータベース化、②訴訟事例とリスク研究から諸環境問題のリスク(金銭)換算、③開発中のサイバープラットフォームに、①と②を地球研の成果とともに地球規模環境情報として集約、④ Android/iOS アプリ「環境観でつながる世界」を活用した不特定多数による非合意形成型ステークホルダーワークショップの実施と環境観ネットワーク形成の可視化(図)、⑤ ③と④を統合した環境問題認識システムの共同開発と作業仮説の検証および新しい地球環境観形成の促進。この流れは、10 万人規模のステークホルダーによるシステムと環境観の共創であり、5~ 6 年かかるプロジェクトです。最終的な成果として「化学物質との付き合い方」の提示と(非合意形成型)性善説ガバナンスの提示による社会変革の可能性を期待しています。

図 毎週更新する環境観の世界地図(構想)
図 毎週更新する環境観の世界地図(構想)
Android/iOS アプリ「環境観でつながる世界」を端末とする環境問題認識システムを共同開発し、環境観ネットワークの可視化を行なう。これにより、国や地域ごとに優位な環境観を、週単位で更新される世界地図で確認できるようになる。

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