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ローカル・スタンダードによる地域社会再生の実践と風土論の再構築

FS責任者

梶谷真司 東京大学大学院総合文化研究科

主なメンバー

赤井厚雄 早稲田大学総合研究機構
石倉敏明 秋田公立美術大学美術学部
今村 智 熊本県庁東京事務所
大津愛梨 O2 Farm
木岡伸夫 関西大学文学部
鞍田 崇 明治大学理工学部
米家泰作 京都大学大学院文学研究科
服部滋樹 京都造形芸術大学芸術学部
三浦雅之 (株)粟
水内智英 名古屋芸術大学デザイン学部
村松 伸 総合地球環境学研究所
山田仁史 東北大学大学院文学研究科
嘉原 妙 NPO 法人BEPPU PROJECT
EMETT, Robert Rachel Carson Center
ISHIDA, Masato University of Hawaii at Manoa
QUENET, Gregory Université de Versailles

研究プロジェクトについて

グローバリズムのひずみを克服し、地域に固有かつ普遍的な価値を創造するにはどうすればよいか。ローカル・スタンダードが本FS のメインテーマ。「対話」を基軸とすることで、互いの差異を認めつつ共感する「場」の形成を試み、人々が主体的にローカル・スタンダードを創出する手法の確立をめざします。同時に、脱中心化という社会理念をふまえ、従来の「風土論」を再構築し、地域性に立脚した多元的社会の実現を構想します。

なぜこの研究をするのか

地球環境問題の多くは、都市と地方、先進国と途上国など、いわば「中心と周縁」の格差と関連して生じてきました。「中心」となって経済的豊かさを享受してきた都市や先進国によって、地方や途上国は資源を奪われ、環境を破壊され、豊かさから疎外された「周縁」に追いやられてきたといってもよいでしょう。しかも現代では、たとえ両者の関係を逆転させたり、対等にしたとしても本質的な解決には至らないほどに事態は深刻化しています。

最大の問題は、犠牲となっている周縁にも、抑圧している中心にも、その責任を担いうる主体も実体もないことです。社会構造の複雑化にともない、気がつくと私たちは、問題に対する直接的な利害関係をもたないまま当事者となり、あるいは、まるで当事者ではないのに、責任追及される立場へと追いやられています。近年のグローバリゼーションは地域の自律性を奪うとともに、こうした傾向に世界規模で拍車をかけてきました。

本FS は、こうした現状を克服する術を、個々の地域に固有な普遍的価値=ローカル・スタンダードの発見と共有という実践活動のなかに探っていきます。

これからやりたいこと

本FS の方法上の起点は「対話」にあります。特に哲学対話と呼ばれる参加型のワークショップは、単なる合意形成のように意見の違いの解消をめざすのではなく、互いの差異を認めながらも共感を生み出し、それがより創造的かつ安定したコミュニティの形成を促す働きがあります。こうした働きをより効果的に展開するべく、地域研究による「調査」とデザインによる「可視化」を「対話」と連動させるのが、本FS のポイントです。対話はもとより、住民自身が地域の特性や歴史、文化を調べ、そこにかかわるモノ、ヒト、コトバを可視化し、さらに対話を重ねることで、共感の位相の深化を試みます。

これは単なる研究ではなく、ムーブメントです。こうした活動が、小さくても新しい価値を生み出し、社会変革における「触媒」のような役割を果たすのがねらいです。他方、こうした実践活動で得た知見を思想的・文明論的に統合し、従来の「風土論」を再構築し、地域性に立脚した多元的社会の実現を構想します。福島(会津)、京都(丹波)、熊本(阿蘇)の3 地域をメインフィールドとし、台湾、香港、韓国といった経済的発展を遂げた東アジア地域への展開を検討していきます。

写真1 旧福島県大沼郡昭和村立喰丸小学校。
写真1 旧福島県大沼郡昭和村立喰丸小学校。愛されながらも維持のめどがつかず、取り壊しもやむをえないと地元の人々は言う。人口の停滞・減少にともなう、規模の拡大とは異なる豊かさ―ローカル・スタンダードの原点は、身近な地域の身近な風景に寄せるひとりひとりの思いにほかならない

写真2 東日本大震災の被災地である牡鹿半島の小さな漁村で生まれたアクセサリー「OCICA」
写真2 東日本大震災の被災地である牡鹿半島の小さな漁村で生まれたアクセサリー「OCICA」。対話、調査、可視化の3 つのステージを円環のように繰り返すなかで、共感の深化とローカル・スタンダードの創出を試みる本FS にとって、ひとつのモデルケースといえる(写真提供:NOSIGNER)

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