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地域単位の人間圏エネルギーシステムの設計と統合的評価

FS責任者

木下裕介 大阪大学環境イノベーションデザインセンター

コアメンバー

青木一益 富山大学経済学部
吉澤 剛 大阪大学大学院医学系研究科
半藤逸樹 総合地球環境学研究所
窪田順平 総合地球環境学研究所
山口容平 大阪大学大学院工学研究科
MCLELLAN, Ben 京都大学大学院エネルギー科学研究科

研究プロジェクトについて

電力や熱などのエネルギーは人類の生活を支えるために欠かせないものですが、その一方で、エネルギーの利用は気候変動や資源枯渇といったさまざまな地球環境問題を引き起こす要因にもなっています。本FSでは、人間活動と地球環境保全の両立を図るために、エネルギーを介した人間活動と「人間圏エネルギーシステム」の将来あるべき姿を“シナリオ”として描き、技術開発や制度的枠組みの転換のあり方を提示します。

なぜこの研究をするのか

人類はこれまで大量のエネルギーの利用によって発展を遂げてきましたが、それは気候変動、資源枯渇、廃棄物問題といったさまざまな地球環境問題の要因にもなっています。地球環境問題を解決すると同時に、東日本大震災の経験から地震・津波などの自然環境変動にも対応できるようなエネルギー利用のあり方が、今問われています。本FSでは地球環境保全と人間活動の両立に向けて、望ましい「人間圏エネルギーシステム」の将来あるべき姿を描き、それを実現するための方法を探ることを目的とします。ここで言う「人間圏エネルギーシステム」には、エネルギー利用によって支えられている人間活動と、エネルギー利用が地球環境に及ぼす影響の両方を含みます(図1)。本FSでは、主に日本国内のコミュニティを対象地域としながら、いわばボトムアップ的に国レベルの人間圏エネルギーシステムのあるべき姿を提言したいと考えています。

図1 人間圏エネルギーシステムの概念図
図1 人間圏エネルギーシステムの概念図

何をどのように研究するのか

人間圏エネルギーシステムを設計するためには、地震・津波などの自然環境変動への対応、技術(工学的評価、イノベーションなど)・社会(政治、公共政策など)・生活(ライフスタイルなど)を含む複眼的な視点が必要となります。これに対して、本FSではシナリオ・アプローチを採用します。「シナリオ」は、将来を予測するものではなく、将来起こる可能性のある事象間の因果関係を記述するものです。そこでは、ワークショップを通じてさまざまな利害関係者(市民、企業関係者、政府・自治体関係者、研究者など)と協働しながら、望ましい、もしくは望ましくない人間圏エネルギーシステムの将来に関するシナリオを作成します(図2)。このようなシナリオの作成プロセスを通じてさまざまな知を統合化し、そこで描いた将来を実現するような政策・制度などを検討します。さらに、人間圏エネルギーシステムを環境性・経済性・レジリアンスなどの面から多角的に評価します。

本FSでは、人間圏エネルギーシステムを統合的に設計および評価するための汎用的な方法論を提案します。この手法を用いて、主に日本国内のコミュニティを対象にシナリオおよびワークショップというツールを活用し、自治体や市民との連携のもとで多様なアクターを交えた参加型の社会的意思決定の場を提供します。これにより、科学と社会の共創のあり方を提示できると考えています。さらに、学術的な貢献として、人間圏エネルギーシステムの設計には、工学・政治学・公共政策・社会科学・地球システム科学・環境倫理・リスク研究などの多分野にまたがる専門知識を動員することが不可欠なため、プロジェクトの活動を通じて文理融合型の研究者ネットワークを構築し、人間圏エネルギーシステムに関する知の体系を創出します。

図2 コミュニティを対象とした人間圏エネルギーシステム破綻シナリオの作成例
図2 コミュニティを対象とした人間圏エネルギーシステム破綻シナリオの作成例

 

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