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持続的森林利用オプションの評価と将来像

プロジェクトのホームページ

地球研年報(業績一覧など)

 

プロジェクトリーダー
市川昌広 高知大学農学部(総合地球環境学研究所 2009年3月迄)

 

研究プロジェクトについて

陸上の生物多様性は、森林の消失や劣化を主要な原因として減少しつづけており、生物多様性を保全しつつ森林を利用する仕組みが求められています。この研究では、過去の森林利用とそれを変化させた社会・経済的要因、それが生物多様性に与えた影響、および生物多様性の減少によって失われる生態系サービスを明らかにしました。また、伝統的で持続性が高いといわれている利用方法を含め、各種の森林利用オプションの生態学的・社会経済的評価を行うことで、持続的な利用方法をさぐりました。

 

何がどこまでわかったか

本プロジェクトでは、研究サイトとして、森林タイプや人間活動による影響が異なる日本およびマレーシアから4か所 を選定しています。各サイトで、下記の1から4までの課題を研究しました。

1.森林の変化とその要因

ここ50〜100年間の森林の変化を図化し、変化の量や推移確立をマトリクスによって表しました。マトリクスを用い、ドライバー解析や森林管理のシナリオ別に将来的な森林の状況を示すためのツールを開発しました。

2.森林変化による生物多様性への影響

人間活動によるさまざまな生物群集の生物多様性への影響や生態系機能への影響について、各サイトから数多くの知見をえました。森林変化に伴う生物多様性や生態系機能の変化、あるいはそれらのシナリオ別の将来的な状況を地図化できました(図参照)。

3.生物多様性から受けるサービスとその変化

人間活動による生態系サービスへの影響や、人間の生活スタイルや文化と生物多様性利用の関係などについて、多くの知見がえられました。生態系サービスについてもシナリオに応じた変化を地図化しました。

4.森林や生物多様性の持続的利用にかかわる社会的制度

村落レベルの慣習から、国家レベルの規則や国際レベルの条約に至るまで、さまざまな制度についてそれらの目的と実効性を検討しました。

最終的な成果として、上でえられた知見、開発されたツールや地図を生かし、森林の生態系・生物多様性に関する総合アセスメントの方法論を検討しました。この方法論は、今後、精緻化されることにより、政府や民間が用いるアセスメントとして標準化されることが期待されます。

  図 生態系機能地図の一例
花粉を媒介するハナバチの種の多様度の変化(1962年と1997年)およびシナリオ別に予測した2017年の状況を示しています。多様なハナバチの生息には里山復活シナリオが最適であることがわかります

 

地球環境学に対する貢献

森林の生物多様性は、さまざまな生態系サービスを有するため、その利用については地元、国、グローバルレベルの間で利害対立が生じます。本プロジェクトでは、その利害対立を総合アセスメントを通じた社会的な制度の検討によって解消しようと試みました。この試みは、生態学、社会学、政治学、経済学など多分野の研究者の協働を通じて行ないました。生物多様性の減少問題を対象とし、学際的な方法論によって地球環境学に貢献しました。

 

成果の発信

プロジェクト成果として、査読付き論文203編、著書67編、その他、学術誌の特集号や、和文、英文の書籍を発行しました。ユニークな成果としては、大学教養部の授業で生物多様性について教えるためのプレゼン用教材(全11章)を出版しました。