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北東アジアの人間活動が北太平洋の生物生産に与える影響評価

プロジェクトのホームページ

地球研年報(業績一覧など)

プロジェクトリーダー

白岩孝行 北海道大学低温科学研究所(総合地球環境学研究所 2010年3月迄)

研究プロジェクトについて

魚付林。岸辺の森から流れ出す栄養分が沿岸に藻場を作り魚を育むことを指す言葉です。近年、アムール川流域が、オホーツク海や北部北太平洋親潮域の巨大な魚付林になっている可能性が浮かび上がってきました。アムール川からもたらされる溶存鉄が基礎になって、海の生き物をどう育んでいるか、また流域における人為的な土地改変が陸面からの溶存鉄流出にどう影響するかを総合的に解析し、変化の背景を探ることによって、陸と海の間での人や生物の健全な関係の構築を目指します。

 

何がどこまで分かったか

本プロジェクトは、アムール川流域という大陸スケールの陸面環境が、オホーツク海や親潮の“魚付林”として機能していることを世界で初めて解明し、新しい物質循環・生態系連環システムの認識に貢献しました。そして、この類い希なる自然の恵みに依存して生きている東アジアの国々が、連携して巨大魚付林の保全に取り組む必要性を訴え、この問題を学問的な見地から討議するための多国間ネットワーク“アムール・オホーツクコンソーシアム”の設立に中心的な役割を果たしました。

 

地球環境学に対する貢献

2009年11月7-8日に開催された第1回アムール・オホーツクコンソーシアム会議で決議した2011年の第2回会議を企画するため、その準備会合を2010年11月1-2日に開催しました。第1回の会議に参加した諸機関の代表者を始め、新たにモンゴルの代表者、日本国外務省、国連環境計画から関係者が参加し、第2回の開催計画について検討しました(写真)。
一方、アムール・オホーツクコンソーシアムの予備的なウェブサイト(http://www.chikyu.ac.jp/AMOC/)を構築し、英語による基本的な情報発信を開始しました。

 

成果の発信

Journal of Geophysical Research、Journal of HydrologyおよびHydrological Research Lettersなどの学術誌に成果の一部を発表するとともに、一般誌やサイエンス・カフェなどにおいてプロジェクトメンバーが積極的にプロジェクトの成果を発信しました。幸い、プロジェクトが解明したオホーツク海と親潮における鉄の流れが、NHKスペシャル「日本列島 奇跡の大自然」で取り上げられ、多くの国民の知るところとなりました。

写真 2010年11月の準備会合における討論のようす
最前列はロシア科学アカデミー会員のピョートル・Y・バクラノフ教授