地球研案内

設立の趣旨と目的

環境の研究はこれまで科学の諸分野で個別に取り組まれてきました。地球研の使命は、環境問題の本質を解明して、人間と自然とのあり方を提示することです。環境問題には、次のような3つの異なる次元ないし位相があることを理解しておくことが重要です。

第1は、生活上の環境問題であり、身体やライフ・スタイルと関わるさまざまな問題が含まれます。第2は、社会的に構成された問題であり、地球温暖化、生物多様性の喪失、水資源の枯渇、廃棄物による汚染、塩害など、いわゆる地球環境問題がこのなかに含まれます。環境問題の要因となる社会(政治・経済)システムの解明が重要な課題となります。そして第3は、「真」の環境問題であり、自然科学、地球科学が主として扱う大気、水、大地、気候など地球システムのメカニズムとその変動に関わる諸問題が含まれます。

地球環境学は、あらかじめ完成され、体系化されるものではなく、未来に向けて人類が存続してゆくために不断に試行錯誤をするなかで構築していくものです。その点で、常に変化するダイナミックなシステムの構築を目指すべきものでしょう。

地球研は、環境問題を地球全体とそこに住む、あるいは住むであろう人類と生物全体の問題として考える立場を堅持します。総合という意味は、学問領域の総合を意味するとともに、現象を全体、総体として把握しようとする営みであることを指しています。

「地球環境問題の根源は、人間の文化の問題である」と位置づけると、地球研が目指す総合地球環境学は人間の生き方を問う人間科学humanicsとなるでしょう。この点で、総合地球環境学は、自然のなかの人間(性)の問題を扱う環境学の原点に立つべきと考えています。