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開催報告 ~ 地球研未来設計イニシアティブ国際シンポジウム2014:
「地球環境のあるべき姿」の探求

「地球環境のあるべき姿」とは何か?地球環境問題の解決へ向けた地球研の設計科学の検証と、未来への社会転換を多種多様なステークホルダーと議論することを目的とした国際シンポジウムが、2014年3月24日(月)に東京国際フォーラムで開催されました。(矢印開催案内はこちら

今回のシンポジウムは、地球研史上初になる大胆な試みが盛り込まれました。その試みとは、①第13回地球研フォーラムで試行したUstream/Twitterによる聴講者参加方式の国際版を行ったこと、②基調講演に法廷弁護士とシンクタンク代表を招いたこと、③地球研が共同開発したアプリの先行公開デモンストレーションを行ったこと、④対談形式による地球研基幹研究プロジェクト成果の評価をし、⑤著名な小説家と起業家を交えたパネルディスカッションを設けたことです。この背景には、地球研第二期中期計画の要である未来設計イニシアティブの公開評価舞台を、参加者と共に創りたいと願う共同企画者陣の意図がありました。

シンポジウムは3部構成でした。午前中の司会進行はSteven McGreevyさん(地球研特任助教)。開会挨拶(地球研所長 安成哲三さん)と来賓挨拶(文部科学省研究振興局学術機関課長 木村直樹さん)の後、第1部『設計科学と未来可能性』では、窪田順平さん(地球研副所長)が趣旨説明で地球研未来設計イニシアティブを概説し、重要な2つのキーワード、「人間-自然の相互作用環」と「未来可能性」を提示しました。一つ目の基調講演では、法廷弁護士であるPeter Roderickさん(Planetary Boundaries Initiative共同設立者)が、国際法の転換について提案しました。これを受け、谷口真人さん(地球研教授)が、地球環境研究の枠組みと、実際に地球研が行っている研究活動を議論。さらに、Seth Baumさん(Global Catastrophic Risk Institute共同設立者・代表)が地球規模巨大災害リスクと環境観に関する基調講演を行い、半藤逸樹さん(地球研特任准教授・Consilience Cyberspace共同開発者)が環境観のつながりを視覚化する地球研初のアプリ「環境観でつながる世界」の先行公開デモンストレーションを行いました。

午後の司会進行はHein Malleeさん(地球研特任教授)。第2部『地球研の超学際研究プロジェクト』は、超学際研究を実践している二つの基幹研究プロジェクトの成果公開と評価。一つ目は、地球研プロジェクト「統合的水資源管理のための「水土の知」を設える」について、窪田順平さん(地球研教授)と江守正多さん(国立環境研究所気候変動リスク評価研究室室長)が討論しました。二つ目は、「地域環境知形成による新たなコモンズの創生と持続可能な管理」について、佐藤哲さん(地球研教授)とSalvatore Aricóさん(UNESCO上級プログラム・スペシャリスト/国連大学高等研究所上席客員研究員)が討論しました。どちらもこれまでの地球研プロジェクトの成果を統合し、様々なステークホルダーと協働して研究を進めている様子がわかりました。地球研第一期で掲げた文理融合を内包する学術的革新に加え、社会実装を追及する超学際プロジェクトの評価の場になりました。

シンポジウムは第3部『人類が未来を切り拓くための価値と行動』のパネルディスカッションでクライマックスへ。小説家の福井晴敏さん(代表作:『亡国のイージス』、『人類資金』など)と起業家の龜石太夏匡さん(リバースプロジェクト共同代表)を迎え、Peter Roderickさん、Seth Baumさん、江守正多さん、Salvatore Aricóさん、安成哲三さんの計7人の豪華なパネリストを、香坂玲さん(金沢大学准教授)の絶妙なコーディネーションでまとめあげました。パネルディスカッションの議題提起を、松山大耕さん(観光庁Visit Japan 大使・京都観光おもてなし大使・退蔵院副住職)と伊勢谷友介さん(リバースプロジェクト代表)のビデオメッセージで行いました。龜石さんの新しいビジネスモデルや福井さんの『人類資金』における資本共生主義など、研究者以外の方々が、現実社会のそれぞれの分野で自分たち自身の未来と地球環境を考えて行動しているという内容は、多くの参加者にとって新鮮に感じられたと思います。一方、江守さんからは、CO₂削減目標達成のためには、もはやローカルレベルだけでは対応できない、さらにはグローバルな対応をするにしても、今すぐにでも実行しないと達成できない、そしてその事実が社会に浸透していないという強烈な問題意識が挙げられました。これらの話題について、Twitterのコメント等も踏まえながら、パネリストが議論を行い、それが地球環境研究、さらには現実社会へとつながっていく様子が見られました。議論の最後は、「地球研所長になったら何をするか?」という質問に対し、各パネリストが独創的なアイデアを出し、安成哲三さん(地球研所長)の回答で締めくくりました。

参加人数は約104人、Ustreamの視聴回数は3,100回を超えました。地球研史上初になる大胆な試みが盛り込まれた今回のシンポジウムは、地球環境問題の解決へ向けた地球研の役割を多種多様なステークホルダーと共に議論する素晴らしい機会になりました。

(文責・研究部 橋本慧子)

矢印 動画配信中(日本語英語

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安成哲三さんの開会挨拶 来賓挨拶をする木村直樹さん 趣旨説明を行う窪田順平さん 国際法の転換について基調講演をするPeter Roderickさん 国際的枠組みを講演する谷口真人さん 地球規模巨大震災リスクの基調講演を行うSeth Baumさん アプリ「環境観でつながる世界」のデモンストレーションを行う半藤逸樹さん 窪田順平さんと江守正多さんによる「水土の知」プロジェクトの討論 佐藤哲さんとSalvatore Aricóさんによる「地域環境知」プロジェクトの討論 会場の様子。鋭い質問も パネルディスカッションをコーディネートする香坂さん 福井晴敏さんと龜石太夏匡さんん パネルディスカッションの風景。Twitterによる質問・コメントは随時受け付けた。