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第9回全球都市全史研究会
The 9th Whole Earth Urban Historical Research Seminar
『宗教から都市環境を考える』

総合地球環境学研究所「メガシティが地球環境に及ぼすインパクト―そのメカニズム解明と未来可能性に向けた都市圏モデルの提案(プロジェクトリーダー:村松伸)」の一環として、今まで地球に存在した都市の歴史を様々な切り口から考える「全球全史都市研究会」を開催しております。今回は、宗教を切り口に、東アジアの伝統的宗教意識に根差した環境意識、インドネシアのムスリムの環境意識、表記プロジェクトの一環としてのジャカルタでの宗教別の環境意識を予定しております(以下講演要旨参照)。また、コメントはチベット仏教を研究する辻村氏、表記プロジェクトにおいて環境班を率いる村上氏にお願いいたしました。討論の時間では、発表者とコメンテーターを交え、ご参加の皆様からもご意見を頂戴し、有意義な研究会にしたいと思っております。お忙しいこととは存じますが、どうぞご参加いただけますようご案内いたします。

日  時: 2012年10月28日(日) 13:00~16:30
会  場: 東京大学生産技術研究所(駒場キャンパスⅡ)
As棟311,312(中セミナー室4)(矢印アクセス
タイトル: 宗教から都市環境を考える
主 催: 地球研「メガシティが地球環境に及ぼすインパクト」プロジェクト
(通称:メガ都市プロジェクト 代表:村松伸)
【プログラム】
13:00-13:15 「プロジェクト紹介」
  村松伸(総合地球環境学研究所)
13:15-13:45 「東アジアの環境協力可能性―日韓中の環境意識比較を焦点に」
  鄭躍軍(同志社大学)
13:45-14:15 「インドネシア・ジョクジャカルタの事例から見たムスリムの環境意識と環境改善運動」
  青木武信(千葉大学)
14:15-14:45 「都市と宗教とサステイナビリティをどう考えるか?―ジャカルタを例として」
  木村武史(筑波大学)
14:45-15:00 休憩
15:00-15:15 コメントI
  辻村優英(総合地球環境学研究所)
15:15-15:30 コメントII
  村上暁信(筑波大学)
15:30-16:30 討論
  司会 深見奈緒子(早稲田大学)
【講演要旨】
「東アジアの環境協力可能性―日韓中の環境意識比較を焦点に」
鄭 躍軍(同志社大学大学院文化情報学研究科教授)
  日本、韓国、中国を主要国とする東アジアでは、様々な経済活動の活発化にともない、様々な環境問題が国内に留まらず国境を越えて深刻化しつつある。このような越境型環境問題への対応に人々の環境に配慮する行動が不可欠である。本報では、3カ国の一般市民の環境意識の実態及び特徴は何なのか、そしてそれに影響を与える要因は何なのか、東アジアの環境協力可能性はあり得るのかを、東アジア地域を調査対象に収集した「文化・生活・環境に関する国際比較調査」データからの分析結果に基づいて議論を展開する。特に、生活様式、信頼感、宗教信仰などは人々の環境問題への認知にどのような役割を果たしているかを人口統計学的視点から考察する。
「インドネシア・ジョクジャカルタの事例から見たムスリムの環境意識と環境改善運動」
  青木武信(千葉大学国際教育センター客員教授)
インドネシアは1970年代以降、強力に開発政策を推し進めてきた。それにともない、国内では深刻な環境問題が発生してきた。熱帯雨林やマングローブ林の消失、そして都市部では廃棄物問題や河川の汚染といった環境問題に直面してきている。そのような状況下、地域社会では身近な環境問題に対応し、地域の環境を改善するための運動も活発におこなわれている。そうした地域の環境改善運動では、ムスリムとしての意識、イスラームの教えが活動の主要なモチベーションになっていることも珍しくない。そうしたイスラームの教えを基盤としている環境改善運動について、ジョクジャカルタのふたつのコミュニティでの事例を中心に考察する。
「都市と宗教とサステイナビリティをどう考えるか? ジャカルタを例として」
木村 武史(筑波大学教授)
    グローバル・サステイナビリティを考える上で都市の位置づけは極めて重要である。では、都市に生活している人々の宗教はどのような役割を果たすことができるのであろうか。最初に、日本においても都市の宗教は地方の宗教とは異なるように、インドネシアにおいても大都市ジャカルタでの宗教のあり方と地方でのあり方とでは異なっていると考えられているということを指摘しておきたい。そして、ここ数年、インドネシア最大のイスラーム団体NahdlatulUlama (NU)関係者に話を聞いてきたところから見えてきた諸点について報告をしたい。例えば、大都市に住むムスリム知識人の人々の間では環境意識の高い人々がいる一方、地方からやってきて都市において貧しい生活をしている人々には「環境」などと言っている余裕はないかのようである。自然環境保護を説くクルアーンの教えを知りながらも、近代都市の複雑さゆえか、都市の現状が必ずしもイスラームの教えを反映していないという事実に歯がゆさを感じているムスリム知識人もいる。そして、イスラームの宗教的教えを文化的価値として教えなくてはならないと考えている。そのように考える背景には、ムスリムと言いながらも必ずしもイスラームの教えを十分に知らない人々がいるからだ。 他方、インドネシアの少数派であるキリスト教徒はジャカルタという大都市では特に少数派であるということを意識することなく過ごせるという。都市の匿名性と多様性の故であるといえる。欧米におけるエコ神学の影響もあるのか、カトリックであり環境NGOのスタッフでもある女性は、カトリックには聖フランシスのように自然を大切にしてきた伝統もあり、それを復興させることも必要であると話していた。10月初めに行う予定のジャカルタ・キリスト教会の環境活動の調査が進めば、ジャカルタにおけるキリスト教と都市環境についての報告もしたい。
【問合せ】
林 憲吾 | HAYASHI Kengo
(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)
アドレス
総合地球環境学研究所
〒603-8047
京都市北区上賀茂本山457番地4
TEL:075-707-2340(直通)/ 2353
FAX:075-707-2508