第5回中国環境問題研究拠点国際シンポジウム
西南中国の開発と環境・生業・健康

日    時: 2010年11月2日(火)8:30〜17:10
場    所: 雲南大学科学館2楼報告庁(中国昆明市)
主    催: 総合地球環境学研究所中国環境問題研究拠点、雲南大学民族研究院
共    催: 雲南大学生態環境人類学研究中心、雲南大学西南中国環境史研究中心
雲南省健康与発展研究会
言    語: 日本語、中国語 (同時通訳あり)
【趣  旨】
西南中国は、多様な生態環境と顕著な季節性が特徴であり、独自の歴史的・文化的背景をもつさまざま人々が暮らす地域である。近年、急速に経済発展を遂げつつあり、その影響はラオス等を含んだ大メコン圏にも及んでいる。経済発展、特に市場経済化とそれにともなう開発の進展は、人びとの生活環境や健康水準の向上に寄与している。その一方で生業や文化、健康に大きな影響を与え、環境、健康の面での歪みも顕在化しつつあり、環境衛生、職業保健上の問題に適切に対処することが求められている。本シンポジウムでは、環境と健康を地域の立場に立って同時に改善していくために、地域研究、生態人類学、公衆衛生学、歴史学等に基づいて人間と環境との関わりを明らかにするとともに、これらの分野を統合するエコヘル ス(生態学的健康観)の視点に立脚し、地域の望ましい発展経路の設計について議論する。
エコヘルスとは、地域住民の健康と幸福を、地域の生態文化に埋め込まれたものとして捉える生態学的な健康観である。エコヘルスは、身近な環境が健全であることが、人びとの健康や幸福にとって重要であると前提する。したがってエコヘルスが目標とするのは、世界標準の健康を地球の隅々まで普及することではなく、環境・資源の持続的利用とその上に成立している生活文化と、幸福の追求という住民の希望を調和させながら、健康の改善を図ることである。エコヘルスの研究においては、人びとがそれぞれに置かれた環境のなかで、いかに環境リスクを最小化しつつ健康と幸福を最大化できるか、その条件を探り出し、それらを補強することが目的となる。この目的の達成には、医学的アプローチだけでは不十分であり、さまざまな研究分野を包括する統合的アプローチが欠かせない。
本シンポジウムでは、西南中国における過去から現在にわたる環境と生業の変化、さらにその健康転換への影響について、最新の研究トピックを取り上げ、この地域の今後の環境・健康問題のあり方を、エコヘルスの概念に基づく統合的アプローチにより議論し、西南中国の未来可能性を探求する。そのために、3つのセッションと総合討論の4部構成をとる。セッション1では、西南中国における疾病対策の歴史からみた人間と環境の相互作用を取り上げる。近代中国の国家による疾病対策が、雲南の地域性とその固有の疾病とどう関係してきたかが焦点の一つになる。セッション2は「健康」をテーマに、経済発展がもたらした歪みを健康問題の観点から検討する。さらにセッション3では、市場経済化にともなう生業転換が地域住民の生活にいかなる変化をもたらしたかについて、中国とラオスの国境をはさんだ地域におけるゴム栽培農民の事例を比較検討する。総合討論では、これら3つのセッションの議論を受け、西南中国はもとより、大メコン圏をその射程におきつつ、エコヘルスを実現するためのガバナンスのあり方、今後の研究の方向性などを議論する。
プログラムを見る(PDF:307KB)
【お問い合わせ先】
松永光平
(総合地球環境学研究所 中国環境問題研究拠点 研究員)

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
総合地球環境学研究所
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4
TEL:075-707-2462  FAX:075-707-2509

 

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