地球研・ユネスコ・国連大学国際シンポジウム
開催報告


ユネスコ(国際連合教育文化機関)、国際連合大学高等研究所と共催で、国際シンポジウムを開催しました。

2009年3月の第5回世界水フォーラムでは、地球研はテーマ別セッション「文化多様性を越えて-−価値と課題の共有」を開催しました。これは第3回の「水と文化多様性」、第 4回の「水と文化多様性−持続可能な開発の媒介者たち」と引き継いできた継続的な取り組みですが、さらに今回のシンポジウムは、こうした水と文化多様性に関わる地球研の 一連の活動の成果のとりまとめとして企画しました。研究者が報告・議論するセッションを開くとともに、基調講演を一般公開しました。

研究者によるセッションでは、“Diverse water cultures and ecologies” 、“ Development and/ or diversity”、“Future ecologies”の三つのテーマにそって世界各地の事例が紹介され、それらの報告をふまえて、“Roundtable discussion” で総合的な討論が行なわれました。世界のさまざまな地域での水のもつ社会的な意味や文化的な重要性が語られ、文化多様性を基礎にした持続可能な水管理を実現することが、深刻化する水問題を解決するための一つの重要な道筋であることが確認されました。

一般公開シンポジウムでは、四つの基調講演と、講演者によるパネルディスカッションが行なわれました。ユネスコ水教育研究所のリチャード・メガンク前学長は、環境の三位一体の考え方の重要性を指摘しました。「先住民の発展と情報の協会」のエスター・カマク会長は、水に対する先住民の多様な精神的・宗教的な価値を示し、その多様性をこえた統合的水ガバナンスの必要性を訴えました。

 竹村公太郎・日本水フォーラム事務局長は、日本の水と文化の変遷を歴史的視点からとらえました。嘉田由紀子・滋賀県知事は、ご自身の琵琶湖をめぐる「生活環境主義」の研究をもとに、それを政治・行政にどう生かすかを語りました。いずれも長年の経験にもとづく熱い講演で、詰めかけた聴衆に深い印象を残しました。なお、このシンポジウムの成果は、単行本として刊行される予定です。

grayline
一般公開シンポジウムの様子(写真をクリックすると拡大します)。

写真左から、リチャード・メガンク ユネスコ水教育研究所前学長、エスター・カマク 先住民の発展と情報の協会会長
竹村公太郎 日本水フォーラム事務局長


写真左から、嘉田由紀子 滋賀県知事、パネルディスカッションの様子、会場の様子