おかげさまでこのセミナーも三年目を迎えました。環境思想と銘打ちながらも、これまでは、ことさら思想を扱うことは避けてきました。
どこかで聞いたようなフレーズをいたずらに並べるばかり、そんな通りいっぺんの思想には、正直もうウンザリ。それに、いわゆる環境を云々するわけでもないのです、ここでは。そんなものがはじめからあるわけじゃない。あるのはただ、その時々の経験の中から出てくるひと言、それだけ。それを見失わないようにすること、ただそれだけ。言葉は整理されていなくてもいい、何を感じたのか、個々人の息づかいを確かめるところから、いま本当に必要とされている思想のかたちを探ること、それが環境思想ということ、少なくともその原点ではないか――回を重ねるうちにそう思うようにもなってきました。
「環境」=「臨床」
今回の講師、哲学者の鷲田清一さんの言葉をお借りすれば、そう言えるかもしれません。鷲田さんは、日常性と乖離した従来の哲学のあり方にゆさぶりをかけ、現場に即した哲学、「臨床哲学」を提唱してこられました。
「身体と衣服の関係は、身体とそれを保護するもの、遮蔽するものとの関係ではない。衣服抜きに人間の身体は考えられない。自/他、内/外という概念枠ではとらえられないものとして、身体と衣服との関係はある。身体と衣服とのこうした関係のありようをベースとして、わたしたちと環境との関係を考えなおしてみる。」(鷲田清一 環境思想セミナーに寄せて)
わたしたちにとっていちばん身近な衣服と身体の関係に着目し、そこから環境との関わりを問い直そうというのが、今回のねらい。既成の概念枠の克服は、単に新しい言葉を持ち込むだけでなく、そもそも別なる思想のフェーズを探ることになるでしょう。
みなさまのご参加、心よりお待ちしております。