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第16回 「人と自然:環境思想セミナー」

農業が環境を破壊するとき―ユーラシア農耕史と環境」プロジェクト(略称:文明環境史プログラム)では、第16回「人と自然:環境思想セミナー」を下記の通り開催いたします。

セミナータイトルの「人と自然」は、地球研の英語名 Research Institute for Humanity and Nature にちなんでつけてみたものです。さまざまなジャンルの方々からご提供いただいた話題を手がかりに、「人と自然」、その関わりはどうあるべきかをざっくばらんに議論する場になればと思っております。  ふるってご参加ください。。

詳細チラシはこちらです。

テーマ 気配の痕跡−展示デザインと空間の記憶
日    時 11月20日(木)  15:00-17:00
場    所 総合地球環境学研究所 講演室 ( アクセス)
主    催 総合地球環境学研究所 文明環境史プログラム
申込不要 聴講無料

【概  要】

「いままででいちばん感動した展覧会は?」と聞かれたら、まよわず、2006年に東京国立博物館で開催された「プライス・コレクション展」と答えるろう。若冲をはじめとする江戸絵画コレクションが日本に里帰りした展覧会だったのだが、所蔵者であるジョー・プライス氏の意向により、同展の展示スタイルにはこれまでにない独特の趣向が盛り込まれていた。ポイントは二つ。一つはガラスケースをなくすこと。もう一つは、できるだけ自然にちかい光の調整を試みること。ガラス越しに終日変わらぬ蛍光灯のもとでいくら目を凝らして見てみたところで、江戸絵画の本質はわからない。二つのポイントは、つまるところ、かつて江戸の代の人たちが鑑賞した状況下でこそ江戸絵画の魅力は最良の形で経験することができる、ということにきわまる。俗に「光の展示」とよばれた特別のブースが、そうした経験の場を創出すべく設けられた。

そのときはじめて、絵が「動く」という経験をした。ゆっくりと変化する光のなかで、絵はその表情を刻々とかえてゆく。現代の平面的な通常の照明ではほとんど気がつかないほどかすかに描かれた、金地の上の胡粉の雪も、鮮明に見えてくる。たんに見えてくるだけではない。雪は、いままさにふりそめたかのように、画中の人物の上にさらさらとふりかかってゆく。プライス・コレクション展「光の展示」の冒頭、酒井抱一の「佐野渡図屏風」で目の当たりにしたその光景はいまもはっきりと覚えている。ガラスケースが排され、作品をまぢかに見ることができたことはもとより、自然の光のうつろいのままに実にたくみに操作された光の効果が絶大だった。

それは所詮光のたわむれだったのかもしれない。操作された照明のもとで人為的に作り出されたかりそめの姿だったのかもしれない。作品「そのもの」はそうした仮の姿以前のところにある。そういう見方もたしかにあるだろう。しかし、あえていうなら、絵を前にしたわれわれは絵そのもののもとにあるのではなく、時々刻々のかりそめの姿、仮象のもとにあるのではないだろうか。絵だけではない。相手がものであれ人であれ、人間の経験とはそういうものなのだ。経験なんて所詮仮象にしかすぎない。しかし、だからこそ見えてくるすばらしさがある。そのことをプライス・コレクション展はあらためて深く実感させてくれた。

所蔵者プライス氏の意向をうけて、この展覧会の展示デザインを担当したのが木下史青氏である。作品そのものではなく、むしろその受けとめ方を日々あらたに提案しつづけている。人と環境、人間と自然との相互作用という言葉はもはや人口に膾炙したきらいもあるが、その相互作用をいかにわれわれが日常的に感受しているのかはほとんど明らかにされていないように思われる。今回は、展示空間の構想をはじめ環境デザインに取り組んでこられた木下氏とともに、そのつど変化する環境の中での経験の本質とはいかなるものか考えていきたいと思います。

【講  師】
木下 史青氏  (東京国立博物館学芸企画部企画課デザイン室長)
【講師略歴】
1965年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修士課程環境造形デザイン専攻修了。東京芸術大学美術学部デザイン科助手、(株)ライティング プランナーズアソシエーツ、東京国立博物館学芸企画課展示調整室研究員を経て、現在、独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館学芸企画部企画課デザイン室長。日本の博物館・美術館で初の展示デザイン専任スタッフとして活躍する。2008年春の薬師寺展で奔走するさまは、MBS『情熱大陸』でも取り上げられた。愛知県立芸術大学デザイン科、女子美術大学芸術学科などで非常勤講師も務める。著作に、『博物館へ行こう』(岩波ジュニア新書)、『昭和初期の博物館建築』(共著、博物館建築研究会編)など。
¶今後の予定:
第17回/12月22日(月)
「掌に握りしめた雪のように:折口信夫と近代のゆくえ」
講 師:安藤礼二氏(多摩美術大学准教授)
【お問い合わせ (環境思想セミナー企画担当) 】
鞍田 崇  KURATA Takashi
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457-4
大学共同利用機関法人  人間文化研究機構
総合地球環境学研究所 文明環境史プログラム研究員
TEL:075-707-2382  FAX:075-707-2508
Email:
プロジェクトのホームページ

 

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