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「学問と社会のあり方」研究会
第8回研究会(公開)

みなさま

「学問と社会のあり方」研究会から第8回研究会のお知らせです。 今回は、写真家でありサイエンス映像分野で幅広い活動を展開する畑祥雄さん(関西学院大学教授)に話題提供をしていただきます。みなさま、お誘い合わせのうえ、多数ご参加くださいますよう、お願いいたします。

テーマ ポスト・YouTube 時代、学術・文化の「サイエンス・オアシス」を創る
−写真&映像制作からネットTV局へ、新しい社会装置を創造中−
   
日    時 2008年 1月17日(木) 17:30-19:30
場    所 総合地球環境学研究所 講演室 アクセスはこちら
話題提供者 畑祥雄(関西学院大学教授)

【話題提供要旨】
・サイエンス映像学会の設立をめざして
「サイエンス映像学会」設立に向けてのシンポジウムウムが12月16日に東京大学弥生講堂で開かれた。この学会では最先端科学を研究する科学者、テレビ番組の映像制作者、小・中・高校・大学・大学院の教員、企業の広報と機器開発担当者らが対等に意見交換・共同研究をする。「科学創造立国・日本」という国是が掲げられているが、次世代を担う子ども達には理科離れが進んでいる憂慮すべき日本の現状に対して、アニメやCG映像の力を駆使して「百聞は一見にしかず」を学術分野で活かすことをめざす。エンターテイメント性も駆使しながら未知の科学を学ぶサイエンス映像とは、解説を主体とした科学映画ではなく、エンターテイメント性をも駆使しながら未知の科学を学んでいく番組などをインターネットで放送すること を総称している。例えば、ハリウッド映画の「2001年宇宙の旅」、NHK番組の「驚異の小宇宙・人体」、チャールズ・レイ・ イームズの「パワーズオブテン」、手塚治虫の漫画「火の鳥」「ブラックジャック」「鉄腕アトム」など、テーマの科学性と表現 技法などをネット時代に引継ぎ、約10分のショートムービを創る実証実験を始めている。
・放送界の改革に遅れた日本
米国の放送界には80年代に大きな変革があった。24時間ニュースを流すCNN、ケーブルテレビ局から始まったサイエンス映像専門のディスカバリーチャンネルなどが有料放送として良質な映像を世界に配信した。それは世界中で多くの人々の支持を集め、ディスカバリーは147カ国1億6千万世帯が見る巨大な情報文化産業に成長した。しかし、日本では視聴率優先から多くがバラエティ番組化され、捏造によるエセ科学番組で社会的な問題を起こす体質に陥り、世界に発信していく力が欧米や中国・韓国に比べても弱い。規制に守られ孤立主義に甘んじる日本のテレビ界の現状である。
・手塚治虫の漫画はサイエンスの視点を持つ
このような憂慮すべき現状と子ども達の理科離れは無縁ではない。「鉄腕アトム」に見る未来への希望からロボット科学者になった人が多いのは、手塚治虫が幼少時代を過ごした宝塚での自然観察体験や大阪大学医学部で学んだ正確な科学知識を土台に漫画の世界が描かれたことと関係している。それから約40年を経て、漫画も含め映画・テレビ番組・CGアニメの技術を駆使したサイエンス映像をインターネットで見る時代が来ており、2008年4月に「サイエンス映像学会」(養老孟司会長)が設立される。
・中国・韓国にもサイエンス映像の波動が
サイエンス映像への関心は中国や韓国でも広がりを見せている。5年以内に有人の月面着陸をめざす中国の科学発展はめざましく、人口13億人の中で経済発展による貧富の差を縮小するためにも最先端の科学技術をサイエンス映像化して啓蒙していく必要性に迫れている。韓国ではこの10年でアニメ産業の制作拠点を日本から韓国へと移動させること成功したが、現在はその拠点が人件費の安い中国・上海に再移動している。この空洞化する状況をカバーするためにも急速にサイエンス映像への関心が高まっている。CGアニメ等のクリエイターが持つ技術は多くがサイエンス映像の制作に転換できるために、大学のアニメ制作カリキュラムにサイエンス映像の科目が入れられようとしている。
・多様な分野においての映像活用の要請
日本の学校でも映像を使った理科教育の改革が求められ、司法の場でも科学者と企業が特許権をめぐり市民倍審員に対して映像での立証が求められることが始まった。ポストYouTube時代は正確で娯楽性にも富んだサイエンス映像が求められ、多様な分野においても映像活用の要望が高まり、要として「サイエンス映像学会」が設立されることになった。
【話題提供者略歴】  畑 祥雄(hata yoshio)
・主な所属分野
関西学院大学総合政策学部メディア情報学科教授(情報文化産業論・映像制作演習)
元 成安造形大学メディアデザイン群教授
映像プロデューサー・写真家
NPO法人彩都メディア図書館 館長
日本写真家協会会員
写真展覧会ディレクター、
日本科学技術ジャーナリスト会議 理事
アートミーツケア学会副会長
サイエンス映像学会 理事(事務局長)― 2008年4月スタート ―
関西学院大学サイエンス映像研究センター 所長
・主な活動
1994年京都国際映画祭ハイビジョンフェスタで監督作品がグランプリ受賞
第3回 ロッテルダムフォトビエンナーレ個展招待
第3回 咲くやこの花賞(大阪市新人作家賞)受賞
IMIスクール(総合映像コース)総合監督
「背番号のない青春」〜裏方の高校野球のヒューマンドキュメンタリー〜
「HANAKO」〜改良ニワトリの一生を写したシリアスドキュメンタリー〜
「西風のコロンブスたち」〜若き美術家たちの肖像〜
写真表現大学 講座ディレクター歴任(写真表現カリキュラムの創造)
毎日新聞文化欄で写真評論を連載
美術手帖などで写真と文で取材する美術ジャーナリスト活動
成安造形大学・写真表現大学などで後進の写真家&ディレクターなどを多数育成する
認定NPO法人千里アーカイブスステーションで5年間サイエンス番組を制作・実験配信する
・主な展覧会ディレクション
ユージン・アイリーン/スミス「水俣」展、東松照明「桜」展、山沢栄子「アブストラクト」展などの
展覧会ディレクターを務める
・主な作品コレクション
京都国立近代美術館、和歌山県立近代美術館、大阪人権博物館、スキーダム市立美術館
(オランダ)
【予 告】
第9回
2008年2月7日(木)
桃木暁子(元地球研)
「地球研は社会とどうかかわっていけばよいか」
第10回
2008年3月6日(木) 予定
納口恭明(防災科学技術研究所)
「Dr.ナダレンジャーによる無関心層のための防災教育」
【お問い合わせ】
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4
総合地球環境学研究所
研究推進戦略センター 長野
電話:075-707-2502 FAX:075-707-2509
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 (過去の研究会の記録もアップしています。)