HOME > トピックス〈一般〉一覧:2013年 > 1月18日(開催報告)

第48回地球研市民セミナーが開催されました


今回の市民セミナーは、地球研のプロジェクト研究「砂漠化をめぐる風と人と土」のプロ ジェクトリーダーの田中樹さんが、「遠い世界に思いをはせる──アフリカでの開発支援をめぐって」と題して講演しました。

田中さんは、砂漠化問題の要因を「貧困と環境劣化の連鎖」としたうえで、これまで長く国際社会が砂漠化問題に取り組んできたにもかかわらず、解決に有効な手立てがない理由を「人の暮らし」への視点がないことに求め、そのうえで、人の暮らしに視点を据えた支援のあり方を、具体例をもとに説明しました。

前半ではアフリカ・サヘル地域に伝わる押し鋤を紹介。一見単純な農具が、土を無用にかく乱しないことで砂漠化を避ける効果をもつものであることから、土地の人々の自然への向きあい方に根差した知恵に学ぶ必要を強調しました。

後半は田中さん自身が地球研のプロジェクト研究の中で取り組んでいる「耕地内休閑システム」と「ザイ+アンドロポゴン草列」という技術を紹介。「耕地内休閑システム」とは耕地の一部に休閑地を設けることで風食を避け、栄養分の飛散を防ぐ方法、「ザイ+アンドロポゴン草列」とは農地に小さな穴を掘ってアンドロポゴンという野生植物を植える技術で、土壌浸食が抑制されるとともにアンドロポゴンの販売による家計の補助など複数の効果が期待される方法です。この二つの実践例を紹介するとともに、それを地域の人々により浸透しやすくするためには地域社会のなかでのネットワークのあり方にも気を配る必要があること、そのさいに、社会的弱者への支援も忘れてはならないことを述べました。そして、講演の最後に田中さんは地球環境学でいう環境とは「環境とは私とその周り」という意味だと捉えていると述べ、けっして遠い世界のことではないことをあらためて強調しました。

講演のあとの質疑応答では、アフリカの降水量や、どのような植物が生えているのかなどの質問のほかに、砂漠化の定義や砂漠化防止と植林の有効性などの専門的な質問も出て、活発な議論が行なわれました。西アフリカ情勢が緊迫化したなかで行なわれた講演会は、熱気にあふれたものになりました。