第43回地球研市民セミナー開催報告/動画配信

3月11日の東日本大震災では、津波によって多くの尊い命が失われ、「住」の基盤であるまちや集落だけでなく、農業、漁業など生業の基盤に大きなダメージがもたらされました。震災以来何度も被災地を訪れ、積極的に発言を行なっておられる室ア益輝氏(関西学院大学災害復興制度研究所所長)に、被災地がいまどうなっているのか、なにが問題か、復興に向けて私たちはなにを考えたらよいのかを語っていただきました。

セミナーが行なわれたのは、震災から2か月が過ぎた5月半ばでしたが、講演の始めに、「今回の震災以後、震災の被害の状況や復旧では なく、復興への道筋を語るのは初めてです」という室ア氏の言葉が印象的でした。講演とそれに引き続く質疑応答の中で、「復興では、被災者と被災地の自立と再生が鍵となる」、「具体的な基本方針を早く!」、「仮設市街地を早く立てて、現地の人たちが復旧を考える時間をゆっくりと取るべき」、「防災だけではまちは作れない」、「現地の人たちと信頼を築くには時間がかかる。しかしその信頼関係が無い と、私たちはなにもできない」など、室ア氏は次々と示唆に富んだ意見を述べられました。阪神・淡路大震災、中越などの復興に携わってこられた室ア氏にとってみると、被災地域の復旧さえもがなかなか進まず、道筋も見えてこない現状に対する強い危機感があって、それが現地への強い思いとなっていることが感じられました。

最後に室ア氏は、「いま日本で起こっていること、いま日本がたいへんな局面であること、これをどう乗り越えるかが日本にとってとても大切だということを理解するために、一度は現地を見ることが重要です」というメッセージで締めくくられました。参加者は120名を超えましたが、より多くの方に聞いていただきたいセミナーでした。(窪田順平)

このセミナーの模様は動画で配信しております(ページ下部)。

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、窪田順平 地球研准教授、室崎益輝 関西学院大学災害復興制度研究所所長


写真左から、阿部健一 地球研教授、ディスカッションの様子、会場の様子