第28回地球研市民セミナーが開催されました。


第28回地球研市民セミナーが10月17日、地球研で開かれました。地球研客員教授光谷拓実が、まず年輪年代学の概要や原理の説明からはじまり、つづいて年輪年代法の応用事例として、(1)考古学、(2)建築史、(3)自然災害史などに関連した木材の年代測定から(1)では弥生年代が100年以上古くなり、これに続く古墳時代も約50年古く遡る可能性の高いことを指摘、今、弥生〜古墳時代の年代の見直しがおこなわれていることを報告しました。

また(2)では世界最古の木造建築の法隆寺の金堂、五重塔、中門の部材の年代測定から、金堂は668年、五重塔は673年、中門は690年代初め頃に伐採された木材が使われていたことを明かにし、この成果は新しい「法隆寺論争」がはじまるきっかけとなったと報告しました。

(3)では過去の巨大噴火を明かにした事例として、秋田と山形の県境にそびえる鳥海山がスギの埋没木の年輪から紀元前466年に発生したことを明かにし、この時形成された「名勝」象潟の地形は、1804年(文化元年)の大地震によって海底が隆起したために、2474年前の景観を今見ることはできなくなっていることを報告しました。

発表後は、佐藤洋一郎地球研副所長・教授を交え、参加者からの質疑に応じました。参加者からは、植林は何時から始まったのか?といった質問や、年輪データの処理法の考え方について質問が挙がりました。参加者の多くは、わが国における年輪年代学(古年輪学)研究は、今後過去の歴史環境を紐解くうえで有効な研究方法として大いに貢献することを実感したものと思われます。

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渡邉地球研教授による開会挨拶(写真左)、光谷拓実・地球研客員教授(写真中)、佐藤洋一郎・地球研副所長(写真右)


質疑に応える光谷拓実・地球研客員教授(写真左)、議論の様子(写真中、写真右)