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第22回地球研市民セミナー
生きものにとって自然の森だけが大切なのか?
−熱帯と温帯の里山− が開催されました。


第 22 回市民セミナーが11月9日に地球研で開催されました。「生きものにとって自然の森だけが大切なのか?−熱帯と温帯の里山−」というテーマで京大の阿部健一准教授、地球研の湯本貴和教授、そして地球研の市川昌広准教授が話題提供を行い、討論しました。 その要旨は以下のとおりです。

世界各地で森林の劣化・減少が進む中、近年、注目されているのが生物多様性の減少の問題です。とくに、地球上でもっとも生物多様性が高い熱帯雨林では、問題は深刻です。このまま、人間活動によって生物多様性は減少し続けるだけなのでしょうか。

湯本氏は、数百万年の長い歴史を通じて形成されてきた日本の森林や里山について述べ、里山の生物多様性がなぜ高いのかを説明しました。さらに、近年の里山の衰退と生物多様性の減少について指摘しました。市川氏は、熱帯雨林にも「熱帯里山」が存在し、そこが近年進んでいる森林劣化・減少を抑制する鍵になると主張しました。ただし、熱帯里山の生物多様性についての研究は始まったばかりで、今後の研究課題が山積しています。最後に、阿部氏は、日本、中国、東南アジア大陸部・島嶼部の広い範囲を対象に、「里山」のはたしている役割を述べました。熱帯雨林は、本来、人が住まない場所であり、「里山」が成立しうるのかという問題提起をおこないました。

会場からの質問やコメントも活発でした。熱帯でみられるプランテーション開発や木材伐採の現状、近代化が進む中での熱帯里山の方向性などについて討議しました。また、木材などの輸入で熱帯里山は日本とのつながりが深く、市民レベルでも考えていくべきテーマであることが指摘されました。

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湯本貴和教授(写真左)、市川昌広准教授(写真中)、阿部健一准教授(写真右)


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斉藤教授(司会 写真左)、議論の様子(写真中、右)