第9回 地球研フォーラム
「私たちの暮らしのなかの生物多様性」
が開催されました


2010年は国際生物多様性年にあたり、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が10月に名古屋市で開催されます。こうした背景を反映して、本フォーラムも300名を超える聴講者を迎え、盛況裡に終えました。期せずして市井の関心の高さをうかがわせる一幕となりましたが、まさに生物多様性とわれわれの生活との緊密な関係を明らかにすることが目的でした。 課題設定の前提に、生物多様性が急激に損なわれつつある現実への透徹した認識があります。それは一見「多様」にみえなくもない各報告を貫く線分をなしています。

生物多様性条約の成立背景・経緯が国際政治的なコンテクストから見通しよく論じられ(香坂報告)、生活必需品と化した携帯電話とアフリカのゴリラの生息環境の破壊とが相即不離の関係にあることが示され(岡安報告)、われわれの生活の基盤である食糧・食生活の多様性が失われつつあることが明るみにされ(佐藤報告)、日本における生物資源利用の消長が歴史的なパースペクティブから跡づけられ(湯本報告)、市場メカニズムの有効利用によって生物多様性の維持と経済成長が同時に達成される可能性が示唆されました(大沼報告)。かくして生物多様性が学問領域横断的な主題であるのみならず、すぐれて「政治」的な問題でもあることが明らかにされました。すなわちわれわれの実践がその帰趨を大いに左右するがゆえに、むしろ、さらに越境的に論じられるべき問題なのです

パネルディスカッションで生物多様性保持をめぐる実践が論点となったのも必然でした。マクロな問題解決につながるミクロな実践の潜在力が、「異質なものを受容する感受性」、「正しい消費」といったキーワードで提起されました。それらのキーワードがいかなる関係にあるのか、またその射程の深度の究明が今後の課題です。(安部 彰)

 矢印 第9回 地球研フォーラム 開催案内

grayline
写真をクリックすると拡大します。
写真1 写真2 写真3

写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、山村則男 地球研教授、香坂玲 名古屋市立大学准教授


写真4 写真5 写真6

写真左から、岡安直比 WWF Japan 自然保護室長、佐藤洋一郎 地球研副所長・教授、湯本貴和 地球研教授


写真7 写真8 写真9

写真左から、大沼あゆみ 慶応義塾大学教授、阿部健一 地球研教授、議論の様子


写真10

会場の様子