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第12回 地球研フォーラム特別企画
地球環境研究を“共に創る”ワークショップ」開催報告


2013年8月23日(金)に、第12回地球研フォーラム特別企画「地球環境研究を“共に創る”ワークショップ」を開催しました。

このワークショップは、第12回地球研フォーラム「“共に創る”地球環境研究」をきっかけに企画されました。もはや研究者だけによる取組では立ちゆかなくなった地球環境研究は、「科学と社会」が“共に創る”ことでより実装的になるのではないか?という発想のもと、ワークショップの目的は、「地球環境研究の課題設定と研究計画の策定」を、地球研の研究者と第12回地球研フォーラム参加者を中心とした一般参加者のみなさまと実践してみることでした。この目的を達成させるため、第12回地球研フォーラムにおける議論で示された地球環境研究に対する社会のニーズと、地球研がもつ研究シーズを組み合わせた5つのテーマを設定し、それぞれのテーマごとに前後半でメンバーを入れ替えつつ約2時間のディスカッションを経て、それぞれ研究計画の枠組みを提案するところまでたどり着きました。

テーマ1) 渡り鳥条約と気候変動 モデレータ:檜山菊地
      →研究計画名「渡り鳥を環境レポーター(環境指標)に」(発表者:菊地)
テーマ2) 身の回りの土地利用と野生動物 モデレータ:矢尾田熊澤
      →研究計画名「自然環境・野生動物と人間社会との共生の認識と構築」(発表者:熊澤)
テーマ3) これからのエネルギー モデレータ:増原加藤
      →研究計画名「発電手段のベストミックスと物語性~社会と科学から見た多様な
        「原単位」認識の差異と検証~」(発表者:加藤)
テーマ4) 環境情報共有のためのメディアの在り方 モデレータ:寺田
      →研究計画名「災害時における個人発信メディアの信頼性を担保するための方策に
         関する研究」(発表者:南)
テーマ5) 環境汚染・環境裁判と環境観の形成 モデレータ:半藤橋本
      →研究計画名「環境汚染問題解決に向けた環境観の形成」(発表者:半藤)

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各テーマのディスカッションの様子

各テーマのディスカッションは、テーマに合った研究計画に必要な要素を、共通のテンプレート(注)にあてはめていくというスタイルをとりました。

まず、そのテーマにおいて「地球環境問題とは何か」というところから議論をスタートさせ、その問題の解決のための研究を行う上で、どのような社会的そして学術的な成果・効果が得られるか?そしてその問題の主要ステークホルダー(利害関係者)は誰で、どのような学術分野の知見が重要になるか?などを整理していきました。

どのテーマも時間不足になるほどに議論が盛り上がり、最後の報告会ぎりぎりまで資料を作成するテーマもありました。できあがった研究計画は、テンプレートに直接書き込んだもの、付箋で貼り付けているもの、テンプレートでは対応できず全く別のかたちに書き換えたもの、など多様なかたちに仕上がりました。

(注) 研究計画を“共に創る”ためのテンプレートとして、Lang et al. (2012). Transdisciplinary research in sustainability science: practice, principles, and challenges. Sustainability Science, 7: 25-43.の図1を援用した。この図は、地球研で超学際研究プロジェクトを構想する際に、たびたび引用されるものである。

できあがった研究計画ポスターと全体のまとめをする熊澤助教

各テーマの研究計画は、最後の報告会で発表しました。自らが議論に参加してできあがった研究計画の発表を、参加者全員が熱心に聞き入っていました。このワークショップを通して、地球研の研究計画の作り方や、研究計画を作る過程を体験していただけたことは、参加者の方にも新しい経験だったようで、「普段話す機会のない研究者と直接議論ができて楽しかった」といった声が多くありました(アンケートより)。報告会終了後も、エントランスに並んで掲示された研究計画ポスターを見ながら、議論を続ける参加者もいました。

一般参加者のみなさまとオープンに研究計画について議論するのは、地球研としても初めての試みで、当初はモデレータを務める所員にも戸惑いと不安がありましたが、全体をとおして概ね好評をいただき、次回に対する期待の声もいただきました。今回の議論によって提案された5つの研究計画を、このワークショップのなかだけで完結するのではなく、今後の研究プロジェクト形成に活かせることができれば、超学際研究を推進する地球研の大きな一歩となると確信しました。国際的にも、地球環境研究に多種多様なステイクホルダーが参画することの重要性・必然性が高まりつつあるなかで、地球研も今回のワークショップを契機としてキャパシティ・ビルディングを行い、“共に創る”さらなる努力を続けなければと感じました。

(文責・管理部 辻はな子)