第10回 地球研フォーラム
足もとの水を見つめなおす
が開催されました


2011年3月11日の東日本大震災は、人々の暮らしに甚大な被害をもたらしました。特に、町を押し流す津波による被害は衝撃的で、水の恐ろしさをまざまざと見せつけられました。本フォーラムは震災より前に企画されたもので、震災及び津波を直接とりあげたものではありませんが、今回のテーマは、震災も含めた地球環境問題を考える上で鋭い切り口になりました。当日は200名をこえる聴講者を迎え、盛況裡に終えることができました。

要旨説明では、内山氏が東日本大震災について触れ、水は与え、そして奪うものである、と指摘。水を文化のまなざしから見つめ直す必要があると述べました。次に窪田氏が中央ユーラシアの半乾燥地域における水利用について紹介。縮小を続けるアラル海の湖底から遺跡が発見されていることを述べ、環境問題を長期的視点から見ることの重要性を指摘しました。中島氏は、琵琶湖での魚つかみとデータ収集を行っている市民グループ「うおの会」の活動について報告、魚つかみを通じて水に関心を持つことが、環境保全に繋がると指摘しました。高岡氏は中世の説話『酒呑童子』を題材に、日本人のケガレ観と精神的な水の関わりについて詳説しました。村松氏は、都市と建築の視点から、現在の私たちと水との関わりについて、現地調査を紹介しつつ解説しました。MEUTIA氏はインドネシアの人々の生活と水について紹介し、急速な経済成長に伴う水問題の解決に、民俗知を大切にした取り組みが必要と指摘しました。

フォーラムを通じて、奪う水、足りない水、離れた水、心の中の水、ライフサイクルの中の水と、人と水との多面的な関わりが明らかにされました。水との望ましい関係をどのように構築するか、文化の視点を見据えつつ、その具体的方策が今後の課題です。(松森 智彦)

 矢印 第10回 地球研フォーラム 開催案内

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、内山純蔵 地球研准教授、窪田順平 地球研准教授


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写真左から、中島経夫 地球研客員教授・琵琶湖博物館名誉学芸員、高岡弘幸 福岡大学教授、村松 伸 地球研教授


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写真左から、MEUTIA, Ami Aminah 地球研プロジェクト研究員、ディスカッションの様子、会場の様子