第10回地球研地域連携セミナー
水辺の保全と琵琶湖の未来可能性
開催報告


第10回地球研地域連携セミナーは、自然の宝庫でもあり人間生活とも密接なかかわりのある琵琶湖を舞台に、水辺環境の保全における課題を市民、行政、研究者などそれぞれの立場の人びとが共有することを目的に開催されました。

まず、嘉田由紀子滋賀県知事が基調講演で「高度経済成長期を経て、琵琶湖は暮らしから心理的にも社会的にも遠い存在となった」ことを指摘されました。昨年10月にマザーレイク21計画を改訂し、湖が近い存在になるようなしくみづくりが進められているとのことです。次に琵琶湖博物館学芸員の金尾滋史氏からは、琵琶湖周辺に生息する魚類とその生態について、自身の研究成果を踏まえながらご紹介いただきました。地球研の源利文上級研究員からは、コイヘルペスウイルス病を例にあげ、人間による水辺の環境改変により病気が起こりやすい環境を作り出している可能性を、地球研プロジェクトの研究成果を示しながら報告がなされました。堀越昌子滋賀大学教授からは琵琶湖の魚介を使った食文化について具体的な料理を紹介しながらご解説いただきました。中島経夫地球研客員教授・うおの会名誉会長には、「うおの会」の活動をご紹介いただくとともにその活動から得られた在来魚と外来魚の生息地がはっきり分かれている例について紹介がありました。

パネルディスカッションでは、200名を超える参加者の中からウイルスに関する専門的な質問から、外来魚侵入の現状や琵琶湖の魚を使った料理に関する内容まで幅広い質問をいただきました。最後の「よい水とはなにか?」との質問には、各パネリストから多様な環境のある水辺、食べ物を生み出せる水辺、身近に感じられる水辺、そして立場によってよい水は異なるとの意見が出ました。水辺の環境管理には総合的な物の見方が必要であり、琵琶湖で得られた研究成果や問題解決の経験は世界の湖沼にも適用可能であり共有することが重要というのが今回のメッセージです。(本庄三恵)

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写真左から、篠原徹 滋賀県立琵琶湖博物館館長、川端善一郎 地球研教授、嘉田由紀子 滋賀県知事


写真左から、金尾滋史 琵琶湖博物館学芸員、源利文 地球研上級研究員、堀越昌子 滋賀大学教授、


写真左から、中島経夫 地球研客員教授・うおの会名誉会長、阿部健一 地球研教授、立本成文 地球研所長


写真左から、パネルディスカッションの様子、会場の様子