第38回 地球研セミナー


2009年6月30日 総合地球環境学研究所 講演室

「科学」の活かしかた:
  気候変動に関する各国の政策はどのように決まっているのか

Jeffrey Praed Broadbent氏 (ミネソタ大学社会学部 教授)

要  旨:
  人類社会は、2050年までに、災害を引き起こすレベルの気候変動を避けるため、人類温室効果ガス(GHG)の年間地球規模排出量を50%削減しなければならない。これは、先進工業諸国についてはGHGを80%削減しなければならないことを意味している。しかし、京都議定書が採択されたにもかかわらず、効果的なGHG削減を実行しているのはほんの数カ国のみである。この国際社会の反応の鈍さの社会的要因を明らかにし、早急に問題を解決する必要があるだろう。気候変動政策ネットワーク比較プロジェクト(Compon:Comparative Climate Change Policy Networks)は、GHG削減に対する各国の反応パターンを比較し仮説を検証することでこの点を明らかにしようというプロジェクトである。国家が積極的にGHG削減を行うかどうかは、まず第一に、気候変動の科学的証拠が受け入れられるか、によるだろう。科学的根拠としてはIPCC報告があるが、本プロジェクトの課題は、どのような要因により、国の政治組織がIPCC報告を受け入れGHG削減を実行するのか、ということになる。
  仮説検証にあたっては、以下の要因に着目している。
1)  利害関係者間の平等な討論の機会の有無
2)  GHG削減を支持するより強い政治同盟の存在
3)  気候変動の科学的証拠を受け入れる文化的素地
4)  国の科学機関の発達の度合
  15以上の地域(先進国、発展途上国、および「中進国」)のComponチームと国際的レベルで、気候変動国策策定プロセスに携わる組織間の情報ネットワークに焦点を合わせ、共通プロトコルでデータ収集をした。今回はその成果の一部を紹介したい。なお当プロジェクトは、アメリカ国立科学財団や他政府機関より資金を受けている。

 

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