環境人間学の構築に向けて:環境問題への人文学的アプローチ

  • FS1

研究プロジェクトについて

本FSは環境や環境問題の研究に対して人文学的な側面からアプローチをとるものです。その目的は、持続可能な社会について考える際に、文化的側面からより深いレベルの議論を呼び起こすことであり、特に現代の環境に関する研究や持続可能性の課題に対し、人文学の重要性を探究します。

概要

人文学は、現代の環境研究ひいては持続可能な社会の実現にどのような貢献ができるのでしょうか。本FSの研究目的は、環境問題の解決に資する一つの学問領域として「環境人間学」を措定し、この人新世時代に、生態=社会関係に目を向けることの意義を明らかにすることです。

自然に関するさまざまな知識は、長い間、人と自然の持続可能性を支えてきました。その知識の「物」的側面に着目することから本FSの研究は始まります。具体的な研究対象は、自然の「文化的作品」とでもいえる籠細工や織物、さらには農業システムなどであり、そこに埋め込まれた自然から人が生み出した考えを探ります。こうした個別で多様な研究を集め議論を重ね、アジア地域を対象に、環境人間学に関わる研究者のネットワークを活性化させるのが次の段階です。そこでは、あらたな、かつ創造的な、自然科学と人文学の対話のありかたを開発したいと考えています。最終的には、多様な人間の自然認識・経験こそが、今日の地球環境問題について幅広い議論を喚起し、理解を深めるきっかけとなることを示すことになります。

なぜこのような研究をするのか

物質文化と景観とのかかわりを地域の人びとの視線から考察する。森林環境や備長炭の特性、炉、などをいかした伝統的な文化について示した図(和歌山県)

物質文化と景観とのかかわりを地域の人びとの視線から考察する。森林環境や備長炭の特性、炉、などをいかした伝統的な文化について示した図(和歌山県)

本FSは、人間社会をどのようにして地球システムと調和させるかという地球環境問題の根底にある問いかけに答えようとするものです。この問いは本来、持続可能性の核心ですが、今日までの多くの研究は、生物物理学的測定、技術革新さらには公共政策といった限られた側面のみを強調してきました。そのなかで、文化的側面を重視するのが本FSの研究です。地球上のある地域に数千年にわたって生活することを可能にした知恵と文化的実践から、今日を生きるわれわれが学べることも多くあります。

人文学は、生活・場所・自然に関する人類の経験に長く関心を払ってきました。この研究はその人文学の理論と研究方法に基づいていますが、これまで人文学が社会生態的レジリエンスあるいは気候変動適応についての実用的な議論に加わらなかったことには留意しておきたいです。人文学の伝統を超えて、人類の知識と知恵を、現代の問題群である環境問題の解決のための議論に全面的かつ積極的に動員します。

これからやりたいこと

3点について取組みたいと考えています。まず地球研で定期的な研究会を開催することで、環境人間学に関心のある国際的な研究者ネットワーキングを促進・強化します。環境人間学的な研究は、欧米が主導してきましたが、そこにアジア的な視野を持ち込みたいと考えています。次に、何百年何千年にもわたって人と自然がともに創り上げた風景のあるところで臨地研究を組織します。ある特定の風景と直接関わる文化要素を明らかにする臨地研究は、文化現象の事例を豊かに提供するでしょう。最後に、人びとを巻き込み環境意識を高めていくよりよい方法を考えていきます。環境や自然に関心を持つ芸術家や博物館の学芸員との対話も重要になってくると考えています。

メンバー

FS責任者

氏名所属
NILES, Daniel Ely総合地球環境学研究所研究基盤国際センター
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