新国富指標を用いた持続可能な都市設計

  • FS1

研究プロジェクトについて

本研究の目的は、新しい時代文脈における持続可能な発展の社会科学的ビジョンを提示することです。国際レベル、国内レベル、地域レベルといったさまざまな規模の相互関係から分析することで、新時代の諸問題を持続可能な発展論の再構築によって統合します。

なぜこの研究をするのか

技術者が「これが最適な技術だ」と提示しても、実際には予算や政治など、さまざまな問題が絡みます。社会を動かすためには工学だけでなく、経済学的な視点が必要なのです。具体的には、持続可能な社会をはかる“新しいものさし”が必要なのです。

2015年9月、国連持続可能な開発サミットで、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。

SDGsは、持続可能な社会をつくるために17のゴールを設定しています。そして、それを達成するには、具体的な目標を定めて施策を進めなくてはなりません。では、目標の達成度はどうやって測るのでしょうか。

じつは、SDGsの達成度は、これまで国の豊かさを表すために使っていたGDP(国内総生産)では測れません。たとえば、総生産が増えて経済が発展しても、それとともに自然資源が減れば持続可能性は低下するからです。

新しい考え方を具体的にどのように使うかが大事になります。

これからやりたいこと

GDPの問題に対応して、アメリカのノーベル賞経済学者ケネス・アローをはじめ22名の経済学者が研究し、新たな豊かさを表す考え方をつくりました。それが「新国富論」です。2012年の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」では、それをもとにした「新国富指標」が公表されました。これは、SDGs の達成度を測る新しいものさし=指標で、私もその指標作りにかかわりました。

新国富指標は、国や都市の豊かさを「人工資本(道路、建物、機械)」、「人的資源(教育、健康)」、「自然資本(土地、漁業、気候、鉱物資源)」の3つを数値化した合計で表します。

たとえば、「海の環境を守る」のは当然ですね。しかし、どこまで守るべきかという議論は科学的なデータがないとできません。新国富論では、海の資源も経済価値に直して自然資本の1つとして計算します。もちろん、最大の努力をしても不確かな部分は残りますが、専門家と協力すれば、ある程度、魚の資源量を見積もることはできるのです。

たとえば、マグロ漁は禁止すべきだという世論と、そんなことは不要だという漁業者の対立も、新国富指標を使えば客観的に結論が出せます。このまま乱獲を続けてマグロが絶滅するよりは、一時的に禁漁してマグロの資源量を復活させてから漁を再開する方が、持続性があると言えるのです。

この新しい考え方を更に進展させ、地域や企業の現場で使えるようにしたいと考えています。

メンバー

FS責任者

氏名所属
馬奈木 俊介九州大学都市研究センター
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