研究プロジェクトについて
本FSでは、開発途上国に特有な高環境負荷地域において地域ステークホルダーが自ら問題に対処するための地域イノベーションの成立可能性を明らかにします。問題解決の核となる環境修復技術では地域の在来知に着目し、その活用メカニズムを超学際的に考察します。また、地域イノベーションが自律的に機能するための要素として「社会的受容性」に着目し、持続的な地域社会の成立にむけた諸条件を明らかにします。
なぜこの研究をするのか
自然環境破壊や環境汚染は、人間社会と地球環境の相互作用がもたらす深刻な環境問題の一つです。特に、環境汚染は、局所的な問題からグローバルでかつ多元的な問題へと深刻化しつつあります。特に、開発途上国は貧困問題を背景とする長期的かつ深刻な環境汚染を抱えており、そのリスクを解消する有効な対策が実施できていません。私たちは、このような自然環境破壊や環境汚染などが住民の生活や健康へ影響を及ぼす高い環境負荷を抱える地域を「高環境負荷地域」と呼んでいます。
本FSでは、この高環境負荷地域において、地域ステークホルダーが問題に自ら対処するための「地域イノベーション」(長期的に続く環境負荷に対処して、持続可能な社会をステークホルダーと共に創るための地域社会における幅広い変革)の成立可能性を明らかにします。また、この問題解決の核となる環境修復技術では、地域の「在来知」に着目し、その活用メカニズムについて地域社会の組織化の視点も交えて超学際的に考察します。また、地域イノベーションが自律的に機能するための要素として「社会的受容性」(地域イノベーションが地域社会に受け入れられるための条件や程度を示すもの)に着目し、持続的な地域社会の成立にむけた諸条件について定量的・定性的の両面から明らかにします。
これからやりたいこと
上述の問題意識に基づいて、インドネシアのスラウェシ島における小規模人力金採掘による水銀汚染に関して、以下の個別の課題について研究します。
- (1) インドネシア・スラウェシ島において多様な環境問題に積極的に対応している地域社会組織の動態および社会的受容性に関する事例調査研究を実施します。
- (2) スラウェシ島における人力小規模金採掘地域の社会生態系システムの時間・空間的変遷を解明します。
- (3) 人力小規模金採掘地域およびその周辺地域の各社会組織の動態の特性を歴史・文化・地理的観点から理解し、トランスディシプリナリー・アプローチに対するその社会的受容性を解明します。
- (4) 地域ステークホルダーとの対話によって発掘した生態系サービスを活用する「在来知」と科学者の「科学知」とを統合し、持続可能な環境管理能力を向上させる新たなイノベーションを共創すると同時に、その成否について社会的受容性の観点から評価します。
- (5) (1)~(4)の成果に基づいて、研究対象地域における地域イノベーションの社会的受容性メカニズムを解明します。
本研究プロジェクトが順調に進展した場合、いかにして開発途上国の高環境負荷地域における地域社会と環境の相互作用環を正常化し、ステークホルダーと共に持続可能な地域社会を共創するのかという問いに対して、トランスディシプリナリー・アプローチによって地域イノベーションを共創し、その地域社会組織の動的変容を解明することが可能となり、この理論に基づく持続可能な政策の在り方に関する提言を行う段階に到達できると考えられます。このように形成された理論は、プロジェクトにおける実践的な研究によって裏付けられるものとなります。また、この手法は他の地球環境問題への適用可能であり、その理論構築および事例研究が地球環境問題解決に大きく貢献すると考えています。
メンバー
FS責任者
氏名 | 所属 |
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榊原 正幸 | 愛媛大学社会共創学部 |
主なメンバー
氏名 | 所属 |
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武部 博倫 | 愛媛大学大学院理工学研究科 |
世良耕一郎 | 岩手医科大学サイクロトロンセンター |
西村 勝志 | 愛媛大学社会共創学部 |
若林 良和 | 愛媛大学社会共創学部、南予水産研究センター |
田中 勝也 | 滋賀大学環境総合研究センター |
古川 慎哉 | 愛媛大学医学部 |
畑 啓生 | 愛媛大学大学院理工学研究科 |
島上 宗子 | 愛媛大学国際連携推進機構 |
笠松 浩樹 | 愛媛大学社会共創学部 |
Mohamad Jahja | インドネシア国立ゴロンタロ州大学 |
Yayu I. Arifin | インドネシア国立ゴロンタロ州大学 |
Basri | マカッサル健康科学大学 |
高倉 清香 | 常石造船(株) |
山口 勉 | エスペックミック(株) |