グローバルサプライチェーンを通じた都市、企業、家庭の環境影響評価に関する研究

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研究プロジェクトについて

グローバルサプライチェーン(製品やサービスの生産過程)の拡大による中国をはじめとする途上国の急激な経済成長は、環境負荷の深刻な要因となっています。そして、環境負荷だけでなく、そのPM2.5排出などの環境負荷が、どの程度健康被害などの環境への影響を引き起こしているのかについては十分に明らかになっていません。本プロジェクトでは、都市、企業、家庭の行動がグローバルサプライチェーンをとおして、どのようにさまざまな環境問題を引き起こしているのかを明らかにします。

なぜこの研究をするのか

地球環境問題が非常に深刻化していることは、多くの人がニュースなどで知っています。例えば、中国やインドでPM2.5による大気汚染が進み、多くの人が亡くなったり、東南アジアや南米のアマゾンで生物が絶滅の危機に晒されていたりしていることをニュースで読んだことも多いと思います。しかしながら、それは中国やインド、東南アジアや南米だけの問題と言ってしまっていいのでしょうか。なぜ、そこで環境問題が起こっているのかを考えると、その問題の解決策と私たちがどのように関わらなければいけないのかが見えてきます。中国やインドでPM2.5を排出している工場は、ある程度の製品を日本や欧米諸国に輸出するために作っています。また、絶滅の危機に晒されている生物は、乱獲や森林伐採、ダム建設などが原因とされており、そこで伐採された木材は私たちが普段住んでいる家などに、ダムで生み出された電力はアルミニウム精錬のために利用され、その一部は私たちの普段使っている製品に形を変えています。この研究では、世界各国で深刻化している地球環境問題と、企業の調達や都市や家庭での消費とを結びつけ、そこから導き出される解決策を探るために研究をおこなっています。

どこで何をしているのか

この研究プロジェクトには、特定のフィールドはありません。代わりに、各国や各地域、各企業、各都市などが出しているデータを大型のワークステーションやスーパーコンピュータなどを使って分析しています。国内外の大学や研究機関と共同で研究を進めており、主にプログラミングによってデータの分析をおこないます。ただ、フィールドワークを置き換えるわけではなく、むしろ、地域に入り込んで活動している研究者と共同して問題に取り組むことで、より問題の解決に近づくと考えています。

これまでにわかったこと

これまでの研究で、都市と家庭の消費が、どの程度の二酸化炭素がサプライチェーンを通して排出されているのかを明らかにしてきました。世界の都市は、その都市の中だけで完結しているのではなく、都市の外で生産された製品やサービスを消費しており、その過程で排出された環境負荷を理解することは、都市の持続可能性を理解することに役立ちます。また、少数の家庭が他の家庭に比べて非常に多くの環境負荷を出していることも同時に明らかになってきました。日本やインドの都市のカーボンフットプリントは、https://city.spatialfootprint.com/ja/から結果を見ることができます。2018年度に世界約13,000都市の都市に暮らす人びとが消費を通じて排出する二酸化炭素(CO2)の量についての分析結果を公表しました。これまで、個別の事例で都市のカーボンフットプリントを計算した研究はありましたが、世界各国の都市のカーボンフットプリントを包括的に推計した研究は初めてです。本研究成果は学術雑誌「Environmental Research Letters」誌に掲載されました。2019年度、日本国内約60,000世帯の食の消費データを分析しました。その結果、二酸化炭素を多く排出している家庭は、少ない家庭と比較して、アルコール飲料(3.3倍)や菓子類(2.0倍)、レストラン(2.0倍)、野菜、魚の消費額が大きく、カーボンフットプリントに影響していることが明らかになりました。本研究成果は学術雑誌「One Earth」誌に掲載されました。

図1: 京都をはじめとする都市は、直接環境負荷を排出するわけではなく、製品やサービスの輸入を通じて、都市の外側で環境負荷を排出しており、その実態を明らかにしようとしています。

図1: 京都をはじめとする都市は、直接環境負荷を排出するわけではなく、製品やサービスの輸入を通じて、都市の外側で環境負荷を排出しており、その実態を明らかにしようとしています。

伝えたいこと

ある家庭や企業、都市がその中だけで成り立っているわけではなく、その外から多くの製品やサービスを調達することや、購入することよって成り立っています。そして、その過程で多くの環境負荷を排出したり、環境影響を引き起こしたりしています。しかしながら、その影響は十分に明らかになっていません。本プロジェクトの研究成果がその影響を一部ではありますが見える化し、消費や調達が変化するようになればと考えています。

特筆すべき事項

2020年度にはこれまでの大雑把な推定ではなく、マイクロ消費データを用いて、日本やインドの都市レベルのカーボンフットプリントを明らかにし、研究成果を学術雑誌「Environmental Research Letters」誌や学術雑誌「Global Environmental Change」誌に発表しました。また、世界各国の消費が、木材や食品の輸入を通じてどの程度森林伐採を引き起こしているのかを地図化することに成功し、「Nature Ecology & Evolution」誌に掲載予定です。学術誌だけでなく、ウェブサイトなどを通じて、広く情報の発信を行っています。

図2:都市のカーボンフットプリントを地図化したWebサイトのイメージです。詳細は、https://city.spatialfootprint.com/ja/からご覧いただけます。

図2:都市のカーボンフットプリントを地図化したWebサイトのイメージです。詳細は、https://city.spatialfootprint.com/ja/ からご覧いただけます。

プロジェクトリーダー

メンバー

プロジェクトリーダー

氏名所属
金本 圭一朗 総合地球環境学研究所准教授

東北大学博士後期課程修了博士(学術)。2014年から2016年まで九州大学持続可能な社会のための決断科学センター講師、2016年から2018年まで信州大学経法学部応用経済学科講師、2018年より現職。研究関心は産業エコロジー、環境経済学、産業連関分析、ネットワークなど。特に、グローバルサプライチェーンにともなって発生する環境負荷・環境影響の推計に関する研究に従事しています。

研究員

氏名所属
NGUYEN, Tien Hoang 上級研究員
LEE, Jemyung 上級研究員
片渕 結矢 上級研究員
FAHMI, Muhamad 研究員
FARABI-ASL, Hadi 研究員
李 馨萌 研究員
高田 尚子 研究推進員
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